歯科衛生士 2012年4月
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第3回適切なPMTCのための”使い分け”とは? ─歯質に対する影響から考える侵襲を最小にとどめるPMTCペーストの選択法(最終回)宮崎真至*、高見澤俊樹**日本大学歯学部保存学教室修復学講座/*教授 **助教個別の症例に対応した使い分けをPMTCの目的を達成するために本連載ではこれまで、PMTCペーストについてベーシックな視点から考察してきました。最終回の今回は、PMTCを行う際に考慮すべき事項を、臨床の面から見ていきたいと思います。PMTCは、歯科医師や歯科衛生士等の専門家が歯肉縁上や歯肉縁下3mm以内のポケットにあるプラークを機械的に除去する手技です。その実施前には適切な方針立案のために、①カウンセリングと現状の把握、②組織・歯周組織の評価、③咬合のチェック等が必要で、単なるクリーニングとは区別されると理解されています(表1)。これを前提としたうえで、PMTCに使用する研磨材に焦点をあて、PMTCの目的(プラークや着色の除去)をいかにして歯面を損傷させずに行うか、その手法について見てみましょう。そのためにも、まずはPMTCに用いられているペースト類が歯質に及ぼす影響について、再度確認する必要があります。また一般に使用されているエアーポリッシング用パウダーについても、あわせて触れていきます。PMTCを行う際、個別の症例に最適な器具とペーストの選択は、非常に大切な事柄となります。そのためには個々の患者の年齢、口腔内の状況、その状況に対する患者自身の意識などを勘案しなければなりません(図1)。たとえばPMTCにはデブライドメントという大きな目的がありますが、PMTCを通して患者にセルフケアの重要性を認識してもらうことも大切です。他に歯面にステインが付着している症例では、特にタバコのヤニなどの疎水性(水に溶解しにくい性質)をもつ付着物は、除去が困難なものです。このような付着物に対して効果を発揮するのが、空気でパウダーを吹きかけ歯面を清掃するエアーポリッシング装置です(図2)。エアーポリッシングに使用するパウダーの主成分は、いずれも水に溶けやすい炭酸水素ナトリウムまたはグリシンです。このうちグリシンは、タンパク質を構成するアミノ酸の中でもっとも単純な形をもつ糖原性アミノ酸で、ゼラチンやエラスチンといったコラーゲンに多く含まれています。炭酸水素ナトリウムが歯面の着色除去等に用いられるのに対し、グリシンは歯面やインプラントの周囲のバイオフィルムを傷つけることなく効率的に除去する目的で開発されています(図3)。エアーポリッシングは、使用するパウダーの適切な選択によって、矯正治療中やシーラント施術前、あるいは根面のデブライドメントに効果があるとされています。しかし誤った使用法を選択してしまうと歯面に損傷を与えてしまう可能性があるため、器具を用いる際は製造者の説明書等をもう一度確認することが大切です(図4)。いずれの器具や材料・手法を選択するにせよ、歯質や歯冠修復物に損傷を与えないことが、重要なポイントとなります。ステージ別連載 初級ステージ54 歯科衛生士 Vol. 36 No. 4/2012

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