歯科衛生士 3月
7/8

をおさえよう来院にそなえて今後は、全身的な機能が少しだけ低下しているが、通院は可能な患者さんの来院が増える 現在、超高齢社会の到来とともに、歯科医院に来院される患者さんにおける高齢者の割合も増加しています。当院も開業した1990年当時と比べると、来院患者さんの平均年齢が確実に高くなっており、メインテナンスで当院に通ってらっしゃる患者さんの平均年齢は、開業5年後の1995年は55.3歳でしたが、現在は65.5歳になっています。 これは健常時から比べると、全身的な機能が少しだけ低下した高齢の患者さんの来院が多くなってきていることが要因であると考えられます。たとえば、①歩行時に杖をついている患者さん②車いすの生活をされている患者さん③関節の痛みなど、老化にともなう症状がある患者さん④認知症の患者さんなどは、多少の障害はあるものの、歯科医院に通院することが可能です。そして、超高齢社会を迎えた現在は、介護サービスの充実や、バリアフリー化が進みつつありますので、今後はこのような患者さんが歯科医院に来院することが想定されます。 つまり、これからはこれらの患者さんが快適に、そして安心して歯科医院に来院していただける環境をつくっていくことが必要なのです。設備(ハード)の不足は介助(ソフト)の工夫、充実でカバーすることができる 全身的な機能が少しだけ低下した患者さんが来院しやすくするために、歯科医院の設備、すなわちハード面を充実させることは確かに重要です。しかしそれ以上に必要なのがソフト面=「身体に不自由がある患者さんへ行う介助」の充実です。設備が足りなくても、ソフト(介助)が充実していれば、十分に対応できる場面が多くあるからです。 筆者の医院は、他院に比べ、すぐれた設備をもっているわけではありませんが、介助の方法を工夫し、充実させることで高齢の患者さんにも多く来院していただいています。本稿では、特に設備面が不足している医院でも参考になるように、当院での実際の取り組みを紹介し、介助が必要な患者さんにどのように対応すればよいのかを解説していきます。介助の基本をおさえたうえで、患者さんと向き合おう 介助を必要とする患者さんは、それぞれ異なる障害をもっていますし、日々体調も違い、必要とする介助も患者さんごとに違います。ですから、マニュアルをつくって杖をついている患者さんにはこう、車いすからの移乗はこう、と介助の方法を画一的なものにしてしまうと、患者さんが本来必要とし、望んでいる介助とはかけ離れたものになってしまいますし、患者さんに恐怖感や緊張を与え、信頼関係を喪失するきっかけにもなってしまいます。介助は本来、マニュアル化できるものではないのです。 しかし介助の基本をおさえていなければ、介助を行うことができないことも事実です。そのため本稿では、歯科医院における介助の基本的なポイントを整理しています。本稿で介助の基本的なポイントをおさえた方が、それぞれの患者さんと真摯に向き合い、患者さんにとって最善の介助を行っていただけることを願っています。田中五郎Itsuro Tanaka田中歯科医院歯科医師寺田一美Kazumi Terada田中歯科医院歯科助手大野浩子Hiroko Ohno田中歯科医院歯科衛生士田中志津子Shitsuko Tanaka田中歯科医院歯科医師杉本小百合Sayuri Sugimoto田中歯科医院歯科助手93歯科衛生士 Vol.38 March 2014

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です