歯科衛生士 2014年6月
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ブラッシング指導の はじめどきを見極めよう!セルフケアの意欲を高める患者さんも歯科衛生士もPMTCに頼らないで!ブラッシング指導がうまく実践できていない歯科衛生士の多くは、M美さんのようにやむを得ずPMTCに頼ってしまっているのではないでしょうか。このタイプに言えるのは、PMTCの目的や効果に関して誤解しているということです。ここでは、PMTCに対する正しい位置づけを整理してみましょう。PMTCの対象はリスク部位のみ! PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)というと「歯科衛生士が行う歯面清掃、バイオフィルムの除去」とみなされているようですが、そもそもPMTCについて皆さんは正しく理解しているでしょうか。PMTCの生みの親であるAxelsson は、「PMTCの目的とは、通常の患者のセルフケアにおいて、十分管理できないような隣接面等に対して徹底的に歯面から細菌性要素を取り除くことである」と言っています。Axelssonの言PMTCの効果はほんのわずか! 「定期的なPMTCで歯周病を管理できる」と思っている人も少なからずいるようですが、これも大きな誤解です。実際に、Needlemanら(2005)が成人性歯周炎の患者さんに対するPMTCの効果を調べたレビューでは、 継続的な口腔清掃指導がない限り、PMTCそのものの効果はわずかしかないとされています1)。PMTCの直後にプラークは付着する! また、Davey & Costerton(2006)にうPMTCは、患者さんのセルフケアが不十分な部位(リスク部位)に特化して歯科衛生士が行う清掃なのです。全面的にPMTCを行うのは間違い! ところが、現在多くの歯科医院では患者さんが日々のセルフケアで清掃できると思われる部位も含めて、歯科衛生士がPMTCで全面的に歯面をピカピカに磨き上げているようです。これは、PMTCの概念を提唱した Axelssonの意図するところではないことをまず頭に入れておきましょう。よれば、PMTCを行った直後の歯面であっても、プラークがすぐさま歯面をコーティングすると示されています2)。この他にも、似たような臨床研究は数多くありますが、そのほとんどにおいて、ほんの数日のうちにプラークで歯面がカバーされることが報告されています。このように、PMTCそのものの効果については、かなり疑問視されているのです。 Ramberg ら(1995)はさらにおもしろい結果を示しています。すなわち、歯肉に炎症がある部位ほどより早くプラークが付着するというのです3)。これらのことをふまえると、 患者さんのセルフケアが難しい歯面や炎症がある歯肉においてPMTCだけを行ったとしても、プラークがなくなるのは一時的にすぎず、その後プラークの付着は健康な歯肉よりも早く起こり、その状態が継続的に一生続くことになります。これでは、歯肉炎さえ解消されないに決まっているのです。PMTCだけでは歯周病は管理できない!誤解していない?2PMTCをすべての歯面に行っちゃダメ!誤解していない?129歯科衛生士 Vol.38 June 2014

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