歯科衛生士 2015年8月
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塗布、洗口、歯磨剤…塗布、洗口、歯磨剤… フッ化物応用 効果に差がつくポイントポイントははココココだ!だ! 日本人の疾病構造は、第二次世界大戦後、結核などの感染性疾患や急性疾患から、慢性疾患の「生活習慣病」へと変容しました。疾病予防を重視する健康観の変遷を受けて、健康教育や保健指導、つまり予防中心の健康づくりを推進していこうという新しい流れが生まれました。このような健康増進に基づく考え方は、地域保健のみならず診療所や家庭における疾病予防の拡大にもつながり、結果、乳幼児期や学齢期においてはう蝕の明らかな減少をもたらしました。その要因の第一は、フッ化物応用の普及であると思われます。 フッ化物の局所応用については、平成15~19年にかけて厚生労働科学研究「フッ化物応用の総合的研究」班より、フッ化物の局所応用についての3部作1~ 3)が出版。平成22年にはそれらに全身応用も加えた『フッ化物応用の科学』4)が上申されました。これらは、フッ化物の効果的で安全な応用法を示したもっとも新しい出版物であり、従来知られている手法とはまったく異なる部分も少なくありません。 本特集では、上記の書籍の内容をふまえて、小児へのフッ化物の局所応用法(フッ化物歯面塗布、フッ化物洗口、フッ化物配合歯磨剤)に関する新しい情報や手法を、歯科医院の領域である歯面塗布を中心に解説していきます。 う蝕予防=「フッ化物塗布」と代名詞のように思われているのに、意外と知られていないのが「フッ化物応用に関する根拠のある知識」です。「フッ化物はどうして歯を強くするのか」「いつ応用するのがもっとも効果的か」――どうでしょう、われわれ医療者側も患者さんも「根拠のない思い違い」をしていませんか。 今回はフッ化物に関する公的な出版物には必ずお名前が登場する、眞木吉信先生に執筆をお願いしました。吉田昊哲 Hironori Yoshida南山手小児歯科院長シリーズナビゲーター「根拠のない指導」をしていませんか?糖細菌宿主う蝕※第3~4回のタイトルは変更となることがあります。第1回リスク全体の視覚化 「ステファンカーブを指導に活用」奥 猛志 おく小児矯正歯科院長第4回糖の面からのアプローチ 「糖と代用糖をカガクする」藤原 卓 長崎大学教授第3回細菌の面からのアプローチ 「ミュータンス菌の性格を知ろう」花田信弘 鶴見大学教授フッ化物のはたらきをおさらい フッ化物には、①エナメル質の結晶性の改善、②フルオロアパタイトの生成、③再石灰化の促進、④細菌・酵素作用の抑制という4つのはたらきがあります(図1)。「歯を強くする」「う蝕を防ぐ」といったフッ化物の力は、これらに由来しますが、はたらき方は応用法によって異なります。 表1は、それぞれの応用法がフッ化物のどのはたらきに関係するかをまとめたものです。日本では、主に歯面塗布、洗口、歯磨剤としてフッ化物が応用されており、いずれも「局所応用」に類します。 フルオロアパタイトの生成は、水道水フロリデーション(水道水へのフッ化物の添加)などのフッ化物の「全身応用」により生じます。日本では水道水フロリデーションは行われていないので、表では「×」となっています。 フッ化物の効果を説明する際に、「フライパンのフッ素コーティングのように、フッ化物が歯をコーティングする」というたとえがされますが、患者さんに単純に理解させるうえでは便利なものの、厳密には正確ではないことがわかります。表1 フッ化物の効用と応用法の関係図1 フッ化物の作用フッ化物歯面塗布フッ化物洗口フッ化物配合歯磨剤エナメル質の結晶性の改善◎○○フルオロアパタイト*の生成×××再石灰化の促進○◎◎細菌・酵素作用の抑制○○○(7月号掲載)*歯や骨を構成するハイドロキシアパタイトにフッ素が取り込まれて作られる。ハイドロキシアパタイトよりも細菌の酸に溶かされにくい性質をもつ。それでは、こちらの表をふまえて、それぞれの応用法が適切な効果を上げる年齢や頻度、薬剤、術式を見ていきましょう。第2回宿主の面からのアプローチ 「フッ化物応用のポイント」眞木吉信 東京歯科大学教授フッ化物抗う蝕作用●酸産生の低下●歯質強化●耐酸性向上●エナメル質の結晶性の改善●フルオロアパタイトの生成●再石灰化の促進●細菌・酵素作用の抑制歯への作用プラークへの作用17歯科衛生士 August 2015 vol.39

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