歯科衛生士 2015年10月
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藤原 卓Taku Fujiwara長崎大学医歯薬学総合研究科小児歯科学分野教授 キシリトールをはじめとした代用甘味料には「むし歯を予防する」とコマーシャルされているものがありますが、実際のところ、どの程度の予防効果が見込めるのでしょうか。また、リスクはないのでしょうか。第4回となるシリーズ最終回は、長年、う蝕の病原菌の研究をされている長崎大学の藤原 卓先生に執筆をお願いしました。はたして代用甘味料がう蝕発症を妨げるメカニズムはどのようなものなのか。エビデンスをもとに噛みくだいてご説明いただきます。吉田昊哲 Hironori Yoshida南山手小児歯科院長シリーズナビゲーター代用甘味料の予防効果を検証!糖細菌宿主う蝕第1回リスク全体の視覚化 「ステファンカーブを指導に活用」奥 猛志 おく小児矯正歯科院長最終回糖の面からのアプローチ 「代用甘味料の予防効果」藤原 卓 長崎大学教授第2回宿主の面からのアプローチ 「フッ化物応用のポイント」眞木吉信 東京歯科大学教授(7月号掲載) 皆さんは甘い物が好きな患者さんに、「お砂糖(スクロース)はむし歯菌のごはんになるから、できるだけ取らないようにしましょう」「どうしても食べたいなら、むし歯を予防する効果のある代用甘味料を使ったものを食べましょう」といったアドバイスをしているのではないでしょうか。ですが、「代用甘味料はどうしてむし歯を予防するの?」と聞かれたときに、そのしくみを詳しく説明できますか。 本稿では、「スクロースの摂取がなぜう蝕につながるのか」「代用甘味料がどのようにう蝕を予防するのか」についての根拠を科学的に確認していきます。代用甘味料は、決してそれだけでう蝕を予防できるものではありませんし、使用にあたって考慮すべき点もあります。正確な知識をもとに、“何となく”の指導から脱却しましょう。(8月号掲載)第3回細菌の面からのアプローチ 「ミュータンス菌の変化を知ろう」花田信弘 鶴見大学教授(9月号掲載)スクロース(砂糖)に代わる「代用甘味料」 図1のように、甘味料には大きく分けて、糖由来の糖質甘味料、糖以外由来の非糖質甘味料があります。糖質甘味料には単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類などがあります。非糖質甘味料にはステビアのように天然に存在するもの(天然甘味料)と、スクラロースのように人工的に合成されたもの(人工甘味料)があります。 いわゆる砂糖は、二糖類のスクロースのことです。甘味料の甘味度の基準はスクロースであり、人工甘味料はいかにスクロースに味を近づけるかが重視されることからも、スクロースが甘味料の中心だといえます。ただ唯一にして最大の欠点は、皆さんご存じのように、う蝕の原因となることです。 う蝕の原因となるスクロースに“代わる甘味料”として、広く使用されるのが「代用甘味料」です。「代用糖」という言葉もよく使われますが、スクラロースなどの非糖質甘味料は糖に含まれないため、本稿では代用甘味料という言葉を用います。図1 主な甘味料の分類糖質甘味料糖類その他天然甘味料人工甘味料非糖質甘味料代用糖(スクロースは除く)代用甘味料(スクロースは除く)ステビアなどスクラロースなど糖アルコール類キシリトール、マルチトールなどオリゴ糖類三糖類、四糖類など二糖類スクロース、マルトース、パラチノースなど単糖類グルコース、フルクトースなど(参考文献1を引用改変)61歯科衛生士 October 2015 vol.39

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