歯科衛生士 2016年5月
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初回2回目3回目う蝕杉山 豊Yutaka Sugiyama 杉山歯科医院院長    は治療の流れ 70歳過ぎまでそれなりの数の歯があった方なのに、わずか数週間で複数歯がう蝕で欠けていく……時間軸で考えた場合、これは異常なスピードです。皆さんはこのような場合、何を疑い、どのように対応するでしょうか? 患者さんに聞いたところ、1袋数十個の飴を1日で食べきる生活を送っているとのことでした。前の月に風邪を引いてのどが痛くなったことからのど飴を舐めており、その後風邪が治っても飴を舐める習慣が続いていたのです。 筆者の経験上、このような場合、ブラッシング指導をしてもう蝕の進行を止めることはできません。圧倒的なスピードで全顎的に進行するう蝕は、まず、頻回な飲食が原因と考えるべきです。 この患者さんへは、歯頚部を狙ったバス法などのブラッシング指導や、軟らかめの歯ブラシの使用を勧めたほうがよいのでしょうか? ブラッシングに問題があれば、うまく磨けていない部分と、うまく磨けていて歯肉が腫れていない部分もあるはずです。 この患者さんには、応対や健康状態の良好さ、全顎的な腫脹から、まず食生活を確認すべきと判断し、細かく聞いてみました。すると、風邪を引いて喉が痛くなり、おかゆや擦りおろしたリンゴばかり食べる生活を2週間続けていたことがわかりました。それを受けて、ブラッシング指導などは特に行わず、食事を通常に戻すことだけをお伝えしました。 2週間後には、歯肉の発赤・腫脹は完全に消失していました(図2)。ブラッシングだけがプラークコントロールではないことがよくわかる症例です。図1 初診時の上顎咬合面観全顎にわたり口蓋側の歯肉が発赤・腫脹している。図2 食事指導2週間後の上顎咬合面観口蓋側の腫脹は消失し、健康的な歯肉の形態・色調を呈している。個人トレーによる精密印象採得。患者さんから「先生、また歯が欠けた」との報告咬合採得。再度、患者さんから「今度は別の歯が欠けた」との報告治療用義歯作製のための診断用模型用印象採得きちんとTBIをして患者さんも協力的なのに再発するう蝕、きちんとSRPしても深いままのポケット……「いったいどうしてなんだろう?」と悩んだ経験はありませんか? 今回は、「トラブル改善のためには、ブラッシング指導やSRPしかない!」と思いがちなあなたへ、長年にわたる臨床経験からGPが導き出した、局所的に起きたう蝕・歯周病の診るべきポイントをパターンごとに解説します。(編集部)CASE1(初診時)年齢・性別70歳代、男性主訴歯が欠けたので入れ歯を作ってほしい所見下顎大臼歯部の欠損、前方群の歯が重度のう蝕で実質欠損状態CASE2(初診時)年齢・性別小学校4年生、女性主訴歯ぐきが腫れた所見全顎にわたる歯肉の腫脹、辺縁歯肉の腫れ(図1)のど飴が原因で、数週間のうちに歯が次々に欠けた!風邪による食生活の変化で、歯肉の腫脹が急発!歯周病35歯科衛生士 May 2016 vol.40

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