歯科衛生士 2016年7月
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 2016年3月現在、わが国の高齢者人口は過去最高の約3,400万人となり1)、世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。抗がん剤や免疫抑制剤をはじめとして、さまざまな薬剤の開発による延命で有病化も進んでおり、以前では普通の生活ができなかったような疾患を持つ高齢の方たちも、今は問題なく日常生活を送ることができるようになってきています。歯科医院へも自分で歩いて来院され、ごくあたりまえのようにユニットに座られていても、実は、重度の心血管疾患や進行がんを患っている場合もまれではありません。 そんな中、歯科治療においては、高齢者への歯周炎に対する抜歯や歯周外科手術、インプラント埋入手術などが増えてきています。患者さんの服薬状況や全身疾患の状態を十分に把握しない状況で手術に臨んでしまうと、重大な疾病を見逃し、医療事故につながってしまいます。それは、医院の信頼はもちろん、われわれ歯科医療従事者の信頼の失墜になりかねません。 必要なのは、われわれの知識のアップデートと積極的な問診の励行です。特に患者さんの服薬状況を確認すれば、ある程度の疾病も予測できますし、当然主治医に対診するきっかけにもなります。今回は、歯科医院における外科手術前の服薬チェックについて学んでいきましょう。 2016年2~3月の2ヵ月間に当院を受診した20~80代の患者さん41名を対象に、インプラントを含む口腔外科手術前の内服薬とアレルギーの有無などを調査してみました(図1~3)。 この結果、60代以上の半数の方が、2種類以上の薬を服用していました。降圧薬以外にも、免疫抑制剤や悪性腫瘍の治療薬である抗RANKLモノクローナル抗体製剤など、歯科で注意の必要な薬を服用している方もいました。20~30代では、毎日薬を飲み続けている人は少ないことがわかりました。アレルギーでは、アルコール消毒液による皮膚のかぶれ、抗菌薬服用後の嘔吐、鎮痛剤服用後の息苦しさがありました。どれも、歯科でよく処方される薬です。 このような薬を服用していたり、アレルギーがあったりする患者さんの抜歯やインプラント埋入手術が決まったら、われわれ歯科衛生士は何に気をつけなければならないのでしょうか? 次ページから一緒に見ていきましょう!OVER65特集Illustration:ひらたともみ今村栄作Eisaku Imamura横浜総合病院歯科口腔外科部長日本口腔外科学会認定専門医中村光哉Mitsuchika Nakamura横浜総合病院内科部長日本循環器学会循環器専門医日本外科学会外科専門医岩渕 慧Kei Iwabuchi横浜総合病院歯科口腔外科歯科衛生士リーダー日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士あたりまえに来院している高齢患者さんの多くが、何らかの疾患を抱え日常的に薬を飲んでいる口腔外科手術を受けた患者さんの服薬・全身疾患・アレルギーについて調べてみました!高齢者有病者の外科手術前に!岩渕 慧横浜総合病院 歯科口腔外科・歯科衛生士今村栄作横浜総合病院 歯科口腔外科・歯科医師岩渕 慧横浜総合病院 歯科口腔外科・歯科衛生士歯科衛生士 July 2016 vol.4020

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