歯科衛生士 2016年7月
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周囲粘膜炎※1 メタ分析(メタアナリシス):統計的分析のなされた複数の研究を収集し、さまざまな角度からそれらを統合したり比較したりする分析研究法。単位インプラント周囲粘膜炎インプラント周囲炎インプラント本数30.7% 9.6%患者人数63.4%18.8%インプラント周囲病変の有病率(文献2より引用改変)(患者数1,497人、インプラント数6,283本、追跡期間5年以上) 実は、日本におけるインプラント周囲病変の有病率のデータは、いまだにきちんとした形で示されていません。世界的にも、まだまだこのようなデータ自体が少ないのが現状ですが、ここでは、2013年にAtiehらによって発表され、昨今インプラントに関する多くの論文や講演会などで引用されている文献を見ていきましょう2)。 この研究では、9つの論文のメタ分析※1により、インプラント治療後5年以上の追跡期間のある患者1,497人(インプラント数6,283本)を対象に、インプラント周囲病変の有病率について調べました。結果で注目すべきは患者レベルでの有病率です。たとえば、歯周病の場合、1本でも歯周病にかかっている歯があれば、その人は「歯周病患者」としてみなされます。同様に、口腔内のインプラントが1本でも周囲病変にかかっていれば、その人は「インプラント周囲病変患者」としてみなされます。これが今回の患者レベルでの有病率です。埋入されたインプラントが1本であろうが、多数本であろうが、病気にかかっている患者であるという認識が大切であろうとの考えから、患者レベルで有病率を見ることが重要と考えられるようになっているのです。話を今回の研究に戻すと、周囲粘膜炎はなんと約6割の患者にみられ、周囲炎も約2割の患者に認められました。この結果をふまえると、インプラント周囲病変はけっして稀な疾患ではなく、むしろ非常にありふれたものであることがわかります。歯科衛生士の皆さんには、まずこの事実を理解したうえで、患者さんに情報提供し、インプラントのメインテナンスを実践してもらいたいと思います。周囲粘膜炎は約6割、周囲炎は約2割の患者で起きている大月基弘 DUO specialists dental clinic・院長インプラント周囲病変の有病率を甘く見るな!そもそも、インプラント周囲病変はどのくらい起きているのか、皆さんご存じでしょうか。ここではまず、その最新情報をご紹介します。前編これが現在のグローバルスタンダード!データでCHECK41歯科衛生士 July 2016 vol.40

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