歯科衛生士 2016年11月
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※1RDA(Relative Dentin Abrasion):象牙質を削る量を数値で表したもの。粒子の大きさ、固さなどが数値に影響する。 歯磨剤については、口腔ケアグッズの中でも、もっともいい加減な情報が氾濫しているといえます。たとえば、「化学物質だから体に悪い」「泡立つと磨いた気になり、きちんと磨けないまま終わってしまう」などがよく噂されます。 しかし、近年、科学的根拠に基づいた医療(EBM)が重 歯磨剤に含まれる汚れを取る成分である清掃剤(研磨剤)はエナメル質よりやわらかいので、エナメル質を傷つけることはありません。しかし、エナメル質よりやわらかい象牙質を対象とした研究では、RDA※1が189の歯磨剤を使用して約100年間分のブラッシングを行うと、0.3mm削れると報告されています4)。とはいえ、この摩耗量はほんの微量であり、健康な歯を維持することに対しては問題ありません5)。 じつは国内で市販されている歯磨剤の清掃剤よりも、歯ブラシの硬さや磨き方のほうが歯のすり減りに大きく影響します5)。歯へのダメージは、ブラッシング圧>歯ブラシの硬さ>清掃剤の順です。とくに、小さいヘッドで毛先が硬い歯ブラシほど、歯に大きな力がかかりやすく、歯質を傷つけやすくなります(図1)。要視されるようになり、ブラッシング行動や内容に関する科学的根拠もまとめられ、これらの噂は誤っていることがわかってきました。 それでは、実際に患者さんから寄せられる質問について、エビデンスに基づきながら解説していきましょう。 口腔内に歯肉退縮などブラッシング力による為害性が認められる場合は、力が分散して歯に力のかかりにくい大きいヘッドの歯ブラシや、ヘッドの脇部分が面取りされている歯ブラシの使用を促すなどして歯を守りましょう。 WHOや各国の国家機関はフッ化物配合の歯磨剤の使用を推進しています。歯磨剤を使用している多くの人々から被害報告がないにもかかわらず、未だに強い信念をもって「歯磨剤の使用を控えるべき」と患者さんに指導している歯科医療従事者がいるのも実情です。 驚くべきことに、「歯磨剤は為害作用が生じるほど歯を削る」というエビデンスのない風評が歯科医療従事者にまで浸透しているのは日本だけのようです。 近年、インターネットが普及し、多くの情報を世界中から得られるようになっています。外国語も自動翻訳できる時代なので、みなさんも疑問があればどんどん検索して国内外からの情報を得るようにしましょう。「歯磨剤が歯を削る」という都市伝説は日本だけ?!歯磨剤は歯を痛める?エナメル質は削りません2,3)。象牙質では微量の摩耗が認められますが、歯の健康に影響しない程度です。歯のすり減りには、歯磨剤よりもブラッシング力の影響が大きいことがわかっています。AQはじめに、患者さんから多く寄せられる質問をもとに、歯磨剤のはたらきを解析します。自信を持って指導できるように、正しい知識を得ましょう。患者さんからの質問、どう答えてる?まずはCheck!図1 ブラッシング力とブラッシング圧25mmの歯ブラシ全体を使って同じ力で磨いたとき、歯面にかかる力を1とすると……20mmの歯ブラシ全体で磨くと…1.2倍25mmの歯ブラシのつま先(1/5ほど)で磨くと…5倍とくにブラシの一部分を用いる場合、歯に力がかかりやすい!同じ力で磨いたとき歯面にかかる力は1Part歯科衛生士 November 2016 vol.4058

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