歯科衛生士 2016年11月
6/8

こんな情報が欲しかった!今さら聞けない歯磨剤のハテナを解消 歯ブラシによる歯肉、歯質へのダメージを認める患者さん(図2)に歯磨剤の使用をやめさせても、解決にならないどころか悪い状況へ導いてしまいます。たとえば、体のマッサージをする際、オイルやクリームを塗って滑りをよくしてからでないと肌に痛みが生じますよね。それと同じことです(図3)。 以前、神経質と思えるほど一日に何度もブラッシングを行う糖尿病患者さんを担当しました。歯頚部歯肉は発赤・腫脹し、歯間部歯肉は退縮して歯ブラシの軌跡や傷がついていました。よくよく聞いてみると、以前、重度歯周病のときに担当歯科衛生士から「歯磨剤を使用せず、ていねいに磨くように」と指導を受けたとのこと。歯ブラシの毛先がチクチクして痛くとも、歯面だけ細かく磨くなどくふうし、また歯間部も痛みをともないながらも歯間ブラシでの清掃を怠らなかったといいます。 そこで、少し多めに歯磨剤を使用して磨くように指導したところ、痛みがなくなり、歯ブラシの毛先が適切な場所に当たるようになりました。すると、歯肉の状態はすぐに改善し、同時に歯間部の傷も消失したのです。 このように、歯磨剤には、成分の粘性により歯ブラシと歯肉の間に被膜が形成され、歯肉の損傷を防ぐはたらきがあるのです。オーバーブラッシングで歯肉退縮のある人ほど、根面う蝕の予防に加え、歯を保護することも考え、しっかり歯磨剤を使うよう指導しましょう。 「発泡剤が多いと泡が立ちすぎてブラッシング時間が短くなる」と考えている方がいますが、発泡剤の量は、ブラッシング時間には影響しないことが確認されています6)。泡立ちは有効成分を口腔内のすみずみまで行き届かせるためにも重要です。そのため、口腔内にいきわたるように意識してブラッシングするように指導しましょう。 以前参加したセミナーで、特別に作製した発泡剤無配合の歯磨剤を使用する機会がありました。歯磨剤や唾液が口から垂れたり、飛び散ったりしてとても磨きにくく、ブラッシング時間が短くなってしまったのを覚えています。泡があることで、ブラッシング時の心地よさや歯ブラシの歯肉への当たりを柔らかくしていることも実感しました。 「泡が立って磨きにくい」という患者さんには、ブラッシング前に唾液を吐き出したり、歯ブラシに歯磨剤をのせる前に水をつけないよう指導しましょう。ブラッシング時の水分量を減らすことで、発泡を抑えられます。図2オーバーブラッシングが認められる歯肉の例図3 指と肌の接触と感触の関連性60代女性。歯肉退縮と象牙質の実質欠損が認められる。ブラッシング力が強く、以前からずっと同様の力で磨いていた。歯肉が退縮していたら露出した歯根に刺激を与えるから、歯磨剤は使わないほうがいい?歯肉退縮が認められる場合、歯ブラシと歯肉の摩擦を減らすためにも歯磨剤をしっかり使いましょう。AQ歯磨剤の泡立ちでブラッシング時間が短くなる?泡立ち成分(発泡剤)の量はブラッシング時間にはあまり影響しません。AQ直接接触●すれる、痛い、ヒリヒリする!一部接触粘度を加えると薄い膜ができる●少しなめらかだけど、引っかかる接触なし粘度が高くなると厚い膜ができる●すべすべ、ぬるぬる、なめらか!指肌指肌膜指肌59歯科衛生士 November 2016 vol.40

元のページ 

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です