歯科衛生士 2016年12月
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最低限おさえておきたい 緊急時対応ABC起きてしまってからでは遅い! 偶発症は手術や検査等の際、偶然に起こった症候、あるいは事象で、因果関係がないものか、不明なものをいいます。一方、ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症)や手術や検査等のあとに、それがもととなって起こる症候は併発症といいます。緊急事態における偶発症とは? 偶発症には予期せずに生じるもの(注意しても避けることが困難なもの)と、知識の不足や誤った器械の使用、整備不備によるものに分けられます。 本稿では、歯科医院で予期せずに起こりやすい代表的な10の偶発症をあげ、その対処法と予防法をご紹介します。 超高齢社会により、わが国では有病者歯科治療の機会が増えています。とくに高齢者は複数の慢性疾患を持ち、それにともない服用する薬剤数が増えることで、診療時に相互作用や薬物有害事象など偶発症が起こりやすい状況にあります。 症状は、脳貧血(血管迷走神経反射)が約6割と半分以上を占め、そのほか異常な薬剤反応(薬物アレルギー・局所麻酔薬中毒)、血圧上昇などがみられます(図1)。 また、死亡事故も起こっており、原因は、脳血管障害と急性心不全がそれぞれ約3割を占め、薬物ショック、気道閉塞などがそれぞれ約1割となっています1)。歯科診療中には少なくとも年間8.8例の重篤なショック、心肺停止、死亡例があると推定され2)、歯科医師の約4割が1年に1度、なんらかの全身的合併症を有した患者の診療を経験し、そのうちの1割は重篤な合併症であったと報告されています1)。 一方、薬物ショックや窒息は高齢者のみならず、小児や若年者においても危険性に大きな差はないと考えられます3)。また、偶発症は緊張や不安などストレスが原因となることもあり、高齢者のみならず、健康な若年成人でも起きています4、5)。予期せずに起きる“偶発症”の発生リスクは高まっている図1 歯科診療での偶発症の症状(文献1より作成)脳貧血 61%(血管迷走神経反射)その他 24%過換気圧症候群 3%血圧上昇 4%薬物アレルギー 4%局所麻酔薬中毒 3% このような背景から、危険性を予測し、偶発症を予防するとともに、いざ起きてしまったときの緊急時対応能力の研鑽が医療安全の観点からも極めて重要となります4-6)。とりわけ、患者さんと接する機会が多い歯科衛生士こそ、患者さんの全身状態を意識して観察する習慣を身につけることが大切なのです4、5)。77歯科衛生士 December 2016 vol.40

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