歯科衛生士 2017年12月
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にかかわるということ児玉久仁子 東京慈恵会医科大学附属病院・家族支援専門看護師児玉久仁子Kuniko Kodama東京慈恵会医科大学附属病院家族支援専門看護師和田美恵Mie Wada東京慈恵会医科大学附属病院緩和ケア認定看護師金子信子Nobuko Kaneko医療法人おひさま会在宅医療やまぐちクリニック[兵庫県]歯科衛生士嚥下トレーナー認定歯科衛生士(老年歯科)緩和ケア病棟・外来で働くスタッフの心のサポートをしています。在宅医療専門の医科のクリニックで、食支援を中心に要介護患者さんをサポートしています。 筆者は以前、あるホスピスで働いていました。そこで、歯科の力を実感するできごとがありました。 われわれのチームが診ていた患者さんは、口腔乾燥が強い、痰が多い、誤嚥性肺炎を繰り返す、口腔ケアを嫌がる、ご家族が最期まで食べることをこだわるなど、口腔にまつわる問題に悩むことが多々ありました。そこで、終末期*ケアに力を入れている歯科医師に往診を依頼することにしたところ――筆者が目の当たりにしたのは、いつも口腔ケアを嫌がって口を開いてくれない患者さんが、気持ちよさそうにケアを受けている姿でした。 一人の患者さんから始まった往診でしたが、「私も、診てほしい」と診察の希望が相次ぎ、次第に歯科医師や歯科衛生士を含む多職種チームで病棟をラウンドするようになりました。歯科を加えて多くの終末期患者を診療するようになってみると、看護師がいったん「問題ない」と評価した患者さんであっても、日常生活自立度(ADL)の低下により口腔ケアがままならなかったり、口腔乾燥によって食べること・話すことに困難を感じている場合があることが明らかになりました。また、歯科介入の元で口腔ケアを行うようになってからは、最期まで経口摂取を続けられる患者さんが増えたように感じています。快適な口腔環境であること、最期まで口から食べることは、生きる希望を持ち続けることにもつながります。ですから、終末期の患者さんとご家族のQOLを大きく左右する口腔内環境の改善にかかわる歯科衛生士の皆さんには、大きな期待が寄せられていると筆者は思っています。 このような終末期ケアでは、患者さんやご家族の苦悩も目の当たりにすることが多くあります。そんなとき、医療者として患者さんやご家族にどんな声をかけ、どんな対応をすればよいのかを本特集でお伝えします。緩和ケア病棟での勤務を経て、現在は臨床現場で患者さんのご家族のサポートをしています。はじめに ―歯科衛生士も最期まで患者さんを支える一員―*終末期:原因疾患によって数日から数年まで幅広い期間が対象となると考えられるが、国による明確な定義はない。また、厚生労働省は2015年のガイドライン1)において「終末期」から「人生の最終段階」と表記を変更した。それにより、終末期=死を迎える時期ではなく、死を迎えるプロセスをも含む時期と捉える動きが起こっている。本特集においても、後者の、より広い意味で「終末期」という表現を使用している。67歯科衛生士 December 2017 vol.41

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