歯科衛生士 2018年1月
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ちょうど50年後にヒトDNAの全塩基配列が解明されたことになる。半世紀で全配列を解明してしまった科学の進歩もすごいと思うが、その後はさらにスピードが加速していった。 5年後の2008年には、ワトソン博士のDNAの全塩基配列を解読するという“とんでもない論文”がNatureという雑誌で発表された2)。この論文のおかげで、ワトソン博士は知らなくてもよい自身の遺伝病のリスクを知ることになった(かわいそう……)。この研究でかかった時間はたった2ヵ月。ヒトゲノム計画では13年もかかったのだから、驚異的なスピードだ。しかも、ヒトゲノム計画では研究費用が4000億円もかかったのに、ワトソン博士のDNA解読には1億2000万円しかかからなかった。 これで驚くのはまだ早い。現在、最新の測定機器を使えば数日で配列がわかり、しかも費用は百万円ほどである(すっ、すごい……)。そして、その測定機器こそが、DNAシークエンサーと呼ばれるものなのだ(図1)。 山本家にとって、1990年は記念すべき年である。わが家に息子が生まれた年なのだ。この年はフランスワインの出来も良かったので、いつか息子と飲むだろうと生まれ年のワインを何年か前に買ったところ……高かった(いやほんと)。後は、そのワインが息子の口に入ればいいのだけれど(ワインは私の“エサ”です)。 さて、わが家に息子が誕生して大騒ぎだったころ、世界では“とある”プロジェクトが静かに動き出していた。ヒトDNAの塩基配列をすべて解読しようという途方もない計画である。ヒトゲノム計画(Human Genome Project)と名付けられたその計画は、国境を越えてさまざまな国が連携して進められた。一番貢献度が高かったのはアメリカで、全体の59%を解読。2番目はイギリスで31%、日本もがんばって3番目で6%だった(銅メダル! パチパチ!)。後はフランス、ドイツ、中国と続く。 1990年に始まったこの計画は、13年の歳月をかけて2003年に終了した。ワトソンとクリックが『DNAの構造が二重らせんであること』を発表したのが1953年なので1)、DNAシークエンサーが“細菌”を解き明かし始めたPrologue図1 DNA解読研究の歴史ヒトDNAの全配列を解明するのに半世紀かかった後、その5年後にはDNAの全塩基配列が解読され、研究のスピードはさらに加速していった。現在では、DNAシークエンサーを使えばたった数日で配列がわかる。2010200019901980197019601950DNAの構造が二重らせんであることを発表DNAの全塩基配列を解読ヒトゲノム計画DNAシークエンサー2008今1990~19532003歯科衛生士 January 2018 vol.4274

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