必ず上達 抜歯手技
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14第2章抜歯に対する誤解 研修医や若手の先生と話していると,抜歯について誤解していることが多いのに驚かされる.上手な手術(抜歯)とは 以下の3つのポイントが上手な手術(抜歯)の必須条件である.腫れない抜歯のポイント①切開線が歯肉頬移行部を大きく超えない②骨を削り過ぎない③暴力的な強い力を加えない④出血させない⑤短時間で終了する⑥縫合は緩めに.強く締めすぎない⑦ 創は開放創に,閉鎖するならドレーン留置(CHAPTER14参照)⑧直後の全身的・局所的安静Point4①患者さんが怖がらない・十分な説明,コミュニケーション.・術前の説明,術中の声かけ,手術の進み具合や残りの所要時間の説明.なかなか抜けないと夢中になって声かけを忘れて,患者を孤立させがちになるので注意.②痛くない・局所麻酔が効けば手術自体は痛くないが,そもそも局所麻酔が痛くて怖いものである.痛くなくてよく効く局所麻酔をすることが大切.③早い,腫れない,術後の経過がよい・手技,テクニックの巧拙が影響する.▲歯周組織のダメージを最小限にできることから,つかめる歯質が残っている場合は鉗子で抜歯するのが基本である.このことは矯正治療に必要な便宜抜去を考えるとよくわかる.ヘーベルでは歯肉,歯槽骨頂にダメージを与誤解1 鉗子で抜くのは野蛮で,ヘーベル1本で抜くのがうまい抜歯?えて矯正治療上不利になる.いきなり鉗子では歯根が折れるという人がいるが,それは鉗子の使い方が誤っているからである.▲抜歯の際に力が必要な場合があることは認めるが,力を入れ過ぎると患者さんはとても怖がるし,事故のもとである.アンダーカットが残っていたり,加えた力の方向誤解2 力を入れれば抜ける?が歯根が抜けてくる方向と異なっていると,ただ歯根を骨に押し付けるばかりの力になって,いくら力を入れても歯は抜けてはこない.▲筆者が若い頃アルバイトに行って抜歯をすると,院長先生に「口腔外科出身者はすぐ切開したがる」と批判されることがあったが,すぐ切開するのは切開の有効性を十分誤解3 切開をしないで抜くのがうまい抜歯?に知っているからである.切開することで短時間で終わるならば,決して侵襲が大きいことにはならない.切開しないで時間がかかること自体が大きな侵襲である.▲歯を原形に近い形で抜くことにこだわって,ガンガン骨を削るのは本末転倒.誤解4 できるだけ歯の原形をとどめて抜くのがうまい抜歯?▲直視・直達が原則なので,見える側,器具を操作しやすい側・位置に術者が移動するのは当然.たとえば左側の深い上顎埋伏智歯を右から抜くのにこだわる必要はない.無理な姿勢はうまくいかないばかりか事故のもと.誤解5 術者は動いてはいけない?

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