必ず上達 抜歯手技
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56鉗子抜歯のポイント 「鉗子で抜歯するのは,ペンチかやっとこ4444で歯を引き抜くように見えて患者が怖がるし,カッコ悪い.ヘーベル1本で抜くのが上手でスマートだ」と思っている若い歯科医師が少なくないようだが,これは誤りである.大学,施設ごとの流儀があるにしても,やはり鉗子でつかめる形態・量・硬さの歯質が残っている場合には鉗子で抜歯するのが基本である. 「鉗子抜歯では歯根破折を起こす恐れがあるので,まずヘーベルで脱臼させてから鉗子で把持して抜歯するのが正しい」という人もいるが,いきなり歯根が破折するほどの力を加えることが誤りであって,鉗子で抜くのが基本である. 鉗子抜歯ではヘーベルよりも歯頸部歯肉,歯槽骨頂へのダメージが小さいことから,とくに矯正治療の便宜抜去(抜歯したスペースに歯を移動させてくるので,歯肉・歯槽骨のダメージを最小限にする必要歯根の大きさ・形態にもっとも合う鉗子を歯頸部にフィットさせる.がある)やインプラント予定部位の抜歯(歯槽頂の高さを下げたくない)では,鉗子で抜歯するのが望ましいことは容易に理解できることと思われる.とくに,上下顎とも小臼歯部付近までは頬側の骨が薄いことが多く,無理にヘーベルを用いると頬側の骨が退縮しやすい.つかめる歯質が残っている場合には迷わず鉗子で抜歯すべきである.CHAPTER7鉗子抜歯 抜歯の際にどの器具を使うかは歯の状態によるが,鉗子でつかむことができる歯質の形態・量・硬さが残っている場合には,まず鉗子を用いるのが基本である.つかんで引っ張りあげれば抜けるというものではなく,ちゃんとした理論がある.歯の状態をよく観察し,鉗子を有効に使えるようになろう.鉗子抜歯のポイント①抜歯の基本は鉗子抜歯である! つかめる歯質が残っているときは鉗子で抜歯する.②歯頸部にフィットする大きさ,形態の鉗子を選択する.③歯軸と鉗子先端の嘴部(歯冠を把持する部分)の軸を一致させる.④引っ張り抜く動きは危険で効果なし.頬舌的に倒して歯槽骨を拡げて抜く.⑤鉗子を頬舌的に倒す際に,残存歯質量によって鉗子がはずれやすい方向があるので注意.⑥単根歯にはねじりを加える.Point1❶

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