必ず上達 抜歯手技
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88第10章上顎埋伏智歯の抜歯時のトラブルの種類と対処タービンで歯冠分割はしない.なぜ歯冠のアンダーカット部分をタービンで分割しないのか?▲アンダーカットをタービンで分割除去するように記載された本もあるが,実際は非常に難しく,またその必要もない.理由①術野が狭く盲目的になりがちで,正確な分割操作をしにくい.②歯冠分割にはタービンが必要だが,直視しにくく狭い術野・視野で,タービンを使うのは危険.③分割して残存歯質が小さく少なくなると,ヘーベルを作用させる部分が小さくなって非常に抜歯が難しくなる.歯冠部分が残っているからこそ,ヘーベルがかかりやすい.④頬側に出すことにより,分割しなくても抜ける.頬側に出すといっても,頬側の骨の削除は近心隅角部の歯頸部が露出する程度で十分であり,頬側歯槽骨をすべて削除する必要はない.筆者はすべての上顎埋伏智歯を歯冠分割せずに抜歯している.臨床の疑問1上顎埋伏智歯の抜歯の骨削除になぜ丸ノミがよいのか?理由①上顎大臼歯部の皮質骨は薄く,骨質も粗で,骨ノミで楽に落とせる.②歯根膜腔に沿って丸骨ノミを槌打することにより,歯根周囲の骨を拡げることができ,脱臼させやすい.臨床の疑問2③タービン,コントラアングルはハンドピースの角度からみて使用しにくい.丸骨ノミの槌打の衝撃がいやな場合は,ストレートハンドピースにラウンドバーをつけて削除してもよい.①上顎洞への穿孔▲穿孔の有無は,口のなかに空気をためさせて確認する.▲鼻から漏れないように意識しても自然に漏れるようなら穿孔あり.②上顎洞への迷入③歯根の破折▲破折して残った場合は非常に摘出困難.無理をすると上顎洞へ穿孔したり,落とし込む危険があるので,除去不可能なら残しておいても可.▲どうしても除去したければ口腔外科専門医へ紹介する.だが,専門医であっても困難なこともある.▲抜歯窩から取りだすことは無理.▲第一・第二大臼歯付近の上顎洞側壁を開削して直接取りだす(CHAPTER17「偶発症の対応③」参照).④上顎結節の骨折▲とくに処置の必要なし.止血をきちんとしておく. ▲上方まで骨折が及ぶと出血が多い.▲術後に開口障害が出現することがあるので,説明しておく.20

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