必ず上達 抜歯手技
8/8

114はじめに 予定していた所要時間を過ぎても抜歯できずに,待合室をみると患者さんが大勢待っている.「しまった,こんな歯に手を出すんじゃなかった」と後悔してもあとの祭り.とにかく頑張って抜くしかない.こういう状況では,ただただ早く終わらせてしまおうと焦ってしまい,操作が乱暴になって出血が多くなり,焦れば焦るほどドツボに……という悪循環に陥りがちである.こういうときに大切なことはありふれた表現ながら,落ち着くこと.落ち着いて術野をよく見て,なぜ抜けないのか,どこに問題があって抜けないのかをつかむことが大事である. どうしても抜けずに抜歯途中で当科へ紹介されてくる患者さんが稀ではないが,そういう症例に共通していることがある.それは① 歯肉弁が起こされていない(視野・術野が不十分)② グルーブが形成されていない(ヘーベルの作用点が確保されていない)③ 分割されていない(歯根の湾曲や開大などのアンダーカットが解消されていない,骨との癒着面積が広い)という点である.この3つの処置がきちんとなされていれば,ほとんどの症例がきっと抜けていただろうと思われる.なかなか抜けないときには,この3つの問題点を解決するように試みよう.まず落ち着く,休憩する 焦って頭に血がのぼっていては,術野がしっかり見えないし,見えていても正確な判断ができない.患者さんも長時間開口していては辛いので,ちょっと休憩しよう.休んでいてはさらに待合室が混んでくるのではと時間がもったいなく思えるかもしれないが,頭を冷やして冷静な判断ができれば,結果的には早く終わることになる.院長室でコーヒーの一杯でも飲んで再開するくらいの余裕が欲しい.少し休んで気分転換して視点を変えることが大事.CHAPTER13抜けないときの対応 歯がなかなか抜けずに予想外に時間がかかってしまうことはよくあることで,あせればあせるほど状況は悪くなりがちである.同じ操作を延々と繰り返していないで,面倒臭がらずに歯肉弁の挙上,歯根の分割,骨の削除などの補助的処置をつぎつぎと繰り出すことが大切.抜歯中断症例に共通している問題点①歯肉弁が起こされていない(視野・術野が不十分)②グルーブが形成されていない(ヘーベルの作用点が確保されていない)③分割されていない(歯根の湾曲や開大などのアンダーカットが解消されていない,骨との癒着面積が広い)Point1

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です