治癒の歯内療法 新版
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治癒の歯内療法090はじめに 歯根未完成歯に歯髄感染が起こり,根管処置が必要になった場合,そこに歯根完成歯における抜髄処置や感染根管処置などの通常の治療概念を当てはめることは,歯の延命に有利にははたらかない.理由は,広く開いた根尖孔をもった根管を物理的に緊密に閉鎖することが困難なことや,仮にできたとしても薄い根管壁を残すような治療のゴールは予後に不安を残すからである. そこで,生体の治癒力を利用して,根尖孔を閉鎖させたり(アペキシフィケーション),あるいは可及的に歯髄組織を保存して根管を狭窄化(閉塞)させたり,理想的には歯根を正常に近い状態で完成へと導くような治療が必要とされる(アペクソジェネシス/パルプ・リバスクラリゼーション).とくに,「パルプ・リバスクラリゼーション」(p117で後述)では,歯髄壊死が生じた歯に歯髄の生活反応が戻り,歯髄腔に石灰化が起こることで歯根が補強され,結果として歯の延命に寄与する. この章では,歯髄炎や歯髄壊死に罹患した歯根未完成歯の治療方針と治癒像について考察する.症例からみる歯髄の治癒中心結節の破折による歯髄炎の治療と治癒 中心結節(dens evaginatus:Fig 1)は,人種により発現部位はさまざまであり,欧米人では切歯に多くみられ(日本語では棘突起とよばれる),アジア系民族(モンゴリアン)では小臼歯に多く発現する1~9.日本人ではTable 1に示すように,小臼歯の約7%にみられ,下顎第二小臼歯中心結節Fig 1a 下顎第二小臼歯に見られた中心結節.Fig 1b 中心結節の歯科用コーンビームCT(以下,CBCT)像.歯髄腔が結節の中に伸びていることがわかる.歯 種出現頻度上顎第一小臼歯0.26第二小臼歯1.91第一大臼歯0.27第二大臼歯0.27第三大臼歯1.22下顎第一小臼歯1.38第二小臼歯3.50第一大臼歯1.12第二大臼歯0.31第三大臼歯2.34Table 1 歯種別中心結節の出現頻度10.単位:%sagittalab

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