態癖ー力のコントロールー
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38筒井照子●つついてるこ1)なぜ「治らない」か,なぜ「治せない」かたとえ科学的にその正しさが証明されている治療法であっても,患者によっては例外的な結果を生じることがある.想定していない因子が,そこに関与したような場合である.まして,理想的な咬合といわれるものは,たんなる仮説であって,十分な臨床評価を経たものではない.もし,咬合再構成の後に,患者が不快症状を訴えるようなことがあれば,仮説そのものを疑うべきであろう.少なくとも個別患者への適用に関して,関わりのありそうな因子を幅広く疑わなければならない.従来,期待する結果が得られない場合,ともすると手技のエラーのせいにしたり,患者の感受性にその責を転嫁して,仮説そのものを検証することが十分ではなかった.「理想的に与えられた咬合」が耐え難いかみ合わせとなる一つの理由介入の背景図1Aの患者は,19年前(1988年頃)に,「かみ合わせの治療」のため大臼歯9本を金属焼付ポーセレンクラウンで修復する処置を受けたところ,その直後から頭痛や肩こりがひどくなり,以来,体調不良に悩まされてきたという.施術した歯科医院とは別の3軒の医院の再治療を経て,さらに症状を悪化させて来院した.初診時,問題の大臼歯部はすべてテンポラリークラウンに置き換わっていたが,前歯部補綴からみても質の高い補綴治療を受けていたことがうかがわれた.患者は,次のように「来院に至るまでの経過」を記している.長くなるが歯科医師が考える「正しい咬合」がどれだけ患者を苦しめることがあるか,改めて確認していただくために引用する.「初め治療した歯科(医院)で,奥歯を陶製のもので,しかも高い(咬み合わせが)もので,入れられ,首や肩に痛みが出たにもかかわらず,『口の中で正しい位置だから』と調整しても貰えず,7年間も合わない歯で我慢を強いられたので,周辺の靱帯が疲弊して弾力性が無くなってしまっているので,少しでも咬合が変化すると,…激しい症状が出てしまいます.…常時,安定しないイライラ感があります.奥歯が低くなりすぎていると判っていても,高くすると身体に拒否反応が出るのが,治療のネックになっていると思います.……18年間前に一度マウスピースを数時間入れたことがありますが,頭が冴えすぎて不眠が続き,最後は,身体中の捻れるような症状になって,恐怖を味わって……」というように,症状についての自分なりの解釈があり,「治らない」「治せない」理由にも患者なりの解釈がある.初診時には,かみ合わせの治療咬合不調和下顎位ショルダーバック癖

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