態癖ー力のコントロールー
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態癖――力のコントロールの多くは態癖が関係していた.また,補綴物装着後,時間経過とともに咬合接触が変化することにも悩まされた.今,考えると,当時は歯肉の形態を整えるために,プロビジョナルレストレーションを長期間かけて三度四度と作り直していたが,その間にレジンの臼歯は摩耗して咬合高径が低下していたのであろう.最終補綴物で咬合面を金属やセラミックに変え,隆線が付与されて接触面積が小さくなると,軽い力で噛み切れるので,筋の緊張がほどけて咬合高径が回復するのだと考えられる.このために咬合接触が変化したものだろう.90年代の半ば,西原克成のバイオメカニックスの考え方4)を知り,口腔外圧となる生活習慣(態癖)が歯列に大きな悪影響を与えることを知った.これが態癖の重要性に目をひらく大きなきっかけを与えてくれた.早速,解決できなかった臨床の悩みの解消につながった(1章の図1A).同じ頃,G. McCoyのDCS(DentalCompression Syndrome)5)を学び,歯頸部の楔状欠損が不正な力による疲労破壊であることを知った.こうして口腔にかかわる力の概念が明確になってきた6).また,機能運動への関心はますます強くなったが,下顎の3点6自由度の運動軌跡を記録するナソヘキサグラフが,機能運動時の顆頭の動きや機能運動の左右差を評価することを可能にしてくれた.それによって,それまで漠然と問題視していたヒンジムーブメントとセントリックバイトへの疑問,限界運動路と機能運動路の違い,下顎運動の作業側と非作業側の時間差,作業側顆頭の動き,機能運動時の干渉など201

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