99症例で知るインプラント日常臨床
1/8

骨造成はインプラント診療を支える基本技術である。三次元的に不足した顎骨の容積を増量し、機能的あるいは審美的に良好なインプラントを可能とする技術として骨造成は、インプラントの進歩と普及に貢献してきた。骨造成には自家骨や骨補填材料を使用する移植法、骨折を起こした後に骨片を想定位置まで漸進的に移動する仮骨延長法、メンブレンを用いて軟組織侵入を阻止し骨形成を促す骨再生誘導法、成長因子を用いた骨再生法などがある。この中でもっとも一般的な移植法を用いた骨造成について文献を検証し、さらに日本インプラント臨床研究会第5回全員発表研修会で行われたアンケートを考察したい。 アンケートでは年100本以上インプラントを行ういわゆるヘビーユーザーの結果を主体とした。上顎洞底挙上術(歯槽頂アプローチを含む)を除いた骨造成を行う頻度が20%未満の会員は50%で、ヘビーユーザーが必ずしも頻繁に骨造成しないことがうかがえる。骨造成の主目的はインプラント維持のための骨の増量だが、ショートインプラントの予知性向上とともに造成の必要性低下が考えられる。一方、60%以上の症例で骨造成を行うという回答者は10%いたが、インプラントの維持のみならず機能的あるいは審美的にすぐれた成果を目的としていることが予測される。 アンケートでは、骨造成で自家骨のみ使用10%、骨補填材料のみ15%、自家骨とメンブレン14%、骨補填材料とメンブレン56%、メンブレンのみ2%だった。骨補填材料の使用は71%で骨造成における重要性が理解できる。骨補填材料の内訳は人工骨が59%(β-TCP40%、HA19%)、異種骨が29%、他家骨が10%だった。骨補填材料には使用認可という本邦特有の問題や同種材料への倫理的問題があり、国外の情報をリアルタイムで取れる現在では大きな懸案事項といえよう。十分な症例数の長期経過観察を行った臨床論文(表1、2)では、人工骨の使用は散見されるのみであり、ほとんどは自家骨もしくは異種骨さらに他家骨が使用されていて本邦との相違がみられる。 アンケートによる骨造成時のメンブレン使用は72%で、メンブレンが骨補填材料と同様に重要であることがわかる。メンブレンは吸収性が63%、非吸収性が35%だった。多くの臨床論文(表1、2)では非吸収性メンブレンが使用され吸収性メンブレンの使用は限られており、ここにも本邦との違いがみられる。とくに垂直的骨造成では吸収性メンブレンの使用は少なく、形態付与性がメンブレンの選択基準になっていると考えられる。 臨床論文(表1、2)から、水平的造成量は自家骨顆粒と非吸収性メンブレンの使用で2.7mm、自家骨ブロックと非吸収性メンブレンで3.5mm、自家骨ブロック単独で4~5.7mm、垂直的造成量は自家骨顆粒と非吸収性メンブレンの使用で2.5~4.5mm、自家骨ブロックとチタンメッシュで4.8mm、自家骨ブロック単独で3.6~11.4mmと自家骨ブロックが優位だった。 水平的造成での合併症発生は、非吸収性メンブレン使はじめに骨造成の今 ―アンケートと文献から―塩田 真(東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学)骨造成の頻度メンブレンの使用骨補填材料の種類骨造成量と合併症シンポジウム Bone Augmentation10

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です