99症例で知るインプラント日常臨床
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本論文は、2010年にボストンで開催されたPRD Symposiumポスターセッションで発表した症例を要約したものである。 図1は、歯周病と骨吸収(下顎臼歯部)の分類(成瀬の分類)である。骨吸収には、骨吸収部位に隣接する残存歯の歯槽骨が吸収していない場合(パターン1)と、吸収している場合(パターン2)の2つの病態が存在する。 パターン1の骨吸収部位に隣接する残存歯が歯周病に罹患していない場合は、仮に15mmの垂直的骨欠損があったとしても、垂直的骨造成は容易に行うことができ、予知性は高いと考えられる。しかし、パターン2の骨吸収部位に隣接する残存歯が重度の歯周病に罹患し、根尖近くまで骨吸収している場合には、垂直的骨造成は困難を極める。歯周病罹患歯を残した状態で垂直的骨造成を行っても、術後の感染の恐れがある。そのため、歯周病罹患歯を便宜的に抜歯し、健全歯の歯槽骨頂の位置まで垂直的に骨造成を行うほうが術後の感染の恐れがなく、手術も容易であり、予知性も高いと考える。 患者は、54歳の男性。2003年5月17日に、上顎前歯部の動揺と義歯の不調和を主訴として来院。3遠心は歯周病に罹患しており、歯槽骨は高度に吸収していた(図2)。そのため、戦略的に 3を抜歯することにより、歯周病に罹患していない 2遠心歯槽骨頂の高さまで15mm垂直的に骨造成を行うことができた(図3~10)。 骨補填材料としては、現在のところ自家骨がゴールドスタンダードと考えられるが、供給部位の手術が必要となる。供給部位は、手術部位と同等あるいはそれ以上の外科的侵襲を加えなければならないことも多く、感染や事故のリスクが増大する。また、採取量は限られており、手術時間の延長などの問題点がある。そのため、自家骨を使わずに複合骨補填材料のみを用いた。 採取した組織に対しEDTA脱灰を行い、通法によりパラフィン切片を作成してHE染色を施した(図8)。組織学的には一部に肉芽の形成をともなった骨組織で、骨はじめに高度骨吸収部位に対して自家骨を用いない15mmの垂直的造成成瀬啓一(山形県開業)図1-a、b 歯周病と骨吸収の分類・パターン1:骨吸収部位に隣接する残存歯の歯槽骨が吸収していない場合。図1-e、f パターン2の場合は歯周病罹患歯を便宜的に抜歯し、健全歯の歯槽骨頂の位置まで垂直的に骨造成を行うほうが予知性も高い。図1-c、d 歯周病と骨吸収の分類・パターン2:骨吸収部位に隣接する残存歯の歯槽骨が吸収している場合。症例供覧材料Histological observationシンポジウム Bone Augmentation14

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