99症例で知るインプラント日常臨床
8/8

補綴外科審美矯正テクノロジーリサーチリカバリーメインテナンス 現在のインプラント治療の潮流は、①トップダウントリートメントの骨造成②治癒期間の短縮化・患者負担の軽減③リスクファクターの明確化と対応④審美性の追求⑤医療安全の5つであるといわれている。当然、今回本章で報告されている各症例も、これらの潮流を踏まえて行われていることがうかがえる。 しかし、どの治療法が十分な科学的かつ臨床的な根拠が持つものなのか、あるいはどの治療法がいまだコンセンサスが取られていない実験的な治療法なのかを正確に理解しておくことが重要であろう。 上顎洞底挙上術やGBRは、コンセンサスの取られている治療法であり、これらの部位に埋入されたインプラントの生存率は、通常の部位に埋入されたインプラントの生存率と同等であるとされている。しかし、骨造成に用いる骨補填材料や、バリアメンブレンの種類に関するコンセンサスは取られていない。したがって、特に、わが国で認可の得られていない骨代替材料を使用する場合には、細心の注意と長期間におよぶ経過観察が重要であろう。上顎洞底挙上術においては、医療安全の面から上顎洞粘膜の損傷を防止するために、多くの新しい器具が開発されており、これらを評価することは、臨床医にとって重要な役割であると考えられる。 治癒期間の短縮化・患者負担の軽減を目的に、抜歯後即時埋入・即時荷重が盛んに行われている。抜歯後即時埋入・即時荷重に関するエビデンスは少なく、特に長期経過症例のデータが不足しいるため、今のところ「科学的・臨床的根拠に乏しく妥当性は不十分である」とされている。また、その短期の成功率は、いかに強力な初期固定力を得ることができるかどうか、つまり臨床医の技術に左右されるといわれている。 この方法は誰でもが行ってよい治療法ではなく、熟練した臨床医のみが最善の結果を得ることができるものと考えるべきであろう。したがって、抜歯後即時埋入・即時荷重の治療方針を取る症例は、十分に選択されるべきであり、今後、除外基準、インプラントの安定性の閾値、必要な骨量・骨質、咬合力の影響などの明確なガイドラインが必要であると思われる。 医療安全やリスクの軽減のために、サージカルテンプレート、ピエゾサージェリー、ショートインプラント、軟組織のマネージメント、基本的埋入術式の工夫などが行われている。中でもサージカルガイドシステムは注目されており、今後さらに精度が増し広く行われることになるであろう。 しかし、いくらハイテクノロジーの機器の開発が進んでも、手術計画を立て、手術のシミュレーションを行うのは私たち歯科医師であり、これをもとにサージカルテンプレートが作製されることから、私たちの診断力、手術技能など高い能力が要求される治療であると考えられる。インプラント外科の現状解説矢島安朝東京歯科大学口腔インプラント学講座主任教授東京歯科大学卒業(社)日本口腔外科学会指導医・専門医公益社団法人 日本口腔インプラント学会指導医・専門医(社)日本顎顔面インプラント学会指導医882章 インプラント外科

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です