HAインプラントインタビュー
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だと思います。図2のように、抜歯後即時埋入を行った後、新たに他の部位が歯根破折を起こした場合、患者さんは同じ治療を望みます。石本 抜歯後即時埋入が登場したころ、ジャンピングディスタンス(インプラントから抜歯窩側壁までの距離:図3)の概念【P73参照】と、フラップを閉じる術式は広く紹介されていた記憶がありますけど、林先生は創を閉じない方法を提唱されましたよね。林 当時(1990年代)、抜歯後即時埋入について書かれた文献を数多く読んだのですが、ほとんどの文献が閉鎖創で手術を行っていました。ところが口腔外科領域の文献1を見てみると、たとえば埋伏歯を抜いた時に、閉鎖創にした場合と開放創にした場合を比較すると、明らかに開放創のほうが感染を起こさないという結果が出ているのです(表1)1。抜歯窩が感染しているということは、そこに嫌気性細菌が存在するわけですから、閉鎖するとかえって細菌の温床になって、培養してしまうことになります。HAインプラント+抜歯後即時埋入の確立石本 今の日本の歯科界では、すでに「HAインプラントの林 揚春先生」というイメージが定着していると思うのですが、チタンからHAに大幅に舵切りをされた一つの分岐点は、やはり抜歯後即時埋入を取り入れたことですか?林 そうですね。一般的には抜歯後、ある程度骨化するのを待ってから、メンブレンを用いた骨造成を併用したインプラント埋入がスタンダードでした。ところがこうした術式だと、きちんと仕上げようと思ったら、治療期間が1年近くかかってしまいます。骨造成と併せて長期間に及ぶインプラント治療を行った患者さんと、抜歯後即時埋入を行った患者さんを比べると、侵襲の大きい外科処置を行い治療期間が長期化した患者さんは、再度同じ治療を望みませんでした。歯科医院へ行くのが嫌になってしまうのです。 その点、抜歯後即時埋入を行った患者さんはほとんどがリピーターになります。手術が1回で終わって抜歯と同時にインプラントが入るというのは、患者さんにとってやはり大きな魅力図1 林 揚春氏のインプラントの歴史を物語る症例(1993~2008)図1 おもに骨質の悪い上顎に対して、HAインプラントを使用していた。1995Steri-OssHA2008Spline2002Astra1995Integral HA1995Steri-OssHA1993ITIHollowcylinder1. Pasqualini D, Cocero N, Castella A, Mela L, Bracco P. Primary and secondary closure of the surgical wound after removal of impacted mandibular third molars:a compara-tive study. Int J Oral Maxillofac Surg 2005;34(1):52-57.第1幕 ×春日井昇平第2幕 ×山道信之第3幕 ×林 揚春48

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