別冊 マイクロデンティストリー YEARBOOK 2011
1/8

36 マイクロスコープ下で髄床底を探ると前医の形成跡より口蓋側に位置する部分に頬側遠心根管口を発見した(白矢印).頬側遠心根管は近心同様Ni-Tiファイル(プロテーパー)にて根管形成を終了した(図7).ファイル試適時のエックス線写真を示す(図8). 患歯に症状がないことを確認し,マイクロスコープ下で垂直加圧根充を行った.術後のエックス線では頬側近心根の髄床底方向に存在する前医の形成した切削跡にも根管充填剤が充填されているのが観察された(図9,10) 歯内療法終了後に紹介元へ戻り,補綴処置が終了し予後良好であるとの報告を受けた. 今回の症例は間違った方向に根管が明示されており,それゆえ正しい根管口明示ができず,穿孔の可能性があった症例であった.マイクロスコープ下では正しい根管口を明示することが容易に可能になったことから,根管明示を含む,どの治療ステップでもマイクロスコープの使用は必要不可欠であることが再確認された.考察とまとめ 拡大視野を獲得するためのもう一つの手段として拡大鏡(ルーペ)がある.マイクロスコープのルーペに対する長所は,以下の3点であると思われる. 第1に拡大率の優位性である.4~25倍を有するマイクロスコープは,症例や治療の段階に応じて随時拡大率を可変する利点を持つ. 第2に観察視軸と照明軸が一致する同軸光源を持つことであり,この最大の特徴は明るい光源により対象物に影が生じずに良好な診断と施術ができることである.筆者らは歯根面に窩洞を形成し,肉眼群,ルーペ群,マイクロスコープ群でMTAを充填したときの窩縁部の適合性と漏洩試験を行った.図11には適合性試験の結果を示す.MTAを充填し,表面をレーザー顕微鏡で解析した鳥瞰図を示した.窩縁とセメント間のギャップは肉眼群で大きく,マイクロスコープ群ではほとんど見られない.図12には漏図5 拡大形成によって頬側近心根管口が明示された(白矢印).図6 頬側遠心根管も根管口でないところに形成跡があった(青矢印).図7 髄床底を整理してマイクロスコープ下にて根管口を明示し,頬側近心根管口明示と同様に,口蓋側よりに頬側遠心根管口を明示した.図8 ファイル試適時のX線写真.図9 根管充填後の口腔内写真.図10 根管充填後のX線写真.図5図6図7図8図9図10

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です