アレキサンダーディシプリン20の原則
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53ブラケットの仕様症例のときにはこのアンギュレーションは使わない. 下顎第一大臼歯上の-6°の歯冠遠心傾斜用のアンギュレーションは下顎レベリングの一助となる. このアンギュレーションの必要性の詳細については過蓋咬合の治療と下顎アーチのレベリングに関する原則14で述べる. 図 6-11には垂直的に正常な咬合と過蓋咬合症例の典型的なアンギュレーションを示している. ブラケット装着の手法は原則7で論じている. トルクアーチワイヤーとブラケットスロットの間での物理的相互作用が, 歯の唇舌的傾斜を補正するトルクとなる. トルクを生み出したりコントロールしたりするためには, 長方形あるいは十分な径の正方形のアーチワイヤーを長方形のブラケットスロットにきちっと入れて使わねばならない. トルクコントロールの程度はアーチワイヤーとブラケットスロットとの関係によって決められる. ブラケットとアーチワイヤーの製造誤差は一定であると仮定すれば, スロットとアーチワイヤーの間のスペース0.001インチごとに事実上約5°のトルクコントロールが失われる可能性がある. たとえば0.022インチのスロット中の0.019×0.025インチのアーチワイヤーは15°の回転自由度(遊び)をもっている. 0.022インチから0.019インチを引くと0.003インチのスペースで, 5°のトルクをかけると約15°となる. 図 6-12はそれぞれのブラケットに組み込まれているトルク値を示している. 治療終了時に実際に表われているトルクを知るためには, 単純にそれぞれのブラケットに付与されている値から5°引けば良い. これが実効トルク値である. 下顎前歯のトルクアレキサンダーディシプリンの仕様のトレードマークは下顎前歯に-5°のトルクが入っていることである. 0.018インチスロットのトルク値は0.017×0.025インチのステンレススティールワイヤーを使ったときに生じる5°の遊びを補うためにデザインされている. 以前に説明したように, この結果最終的に歯に表れるトルク値は0トルクである. -5°の歯冠舌側傾斜(lingual crown)あるいは歯根唇側傾斜(labial root)トルクは0.017×0.025インチのアーチワイヤーと0.018インチのブラケット間の許容差0.001インチを補正する. もともとの前歯の位置にかかわらず, 0.017×0.025インチのステンレススティールワイヤーを入れれば, 患者が上下顎前突で抜歯治療を受けている場合でも, Ⅱ級2類で非抜歯で治療を受けている場合でも, 切歯は理想的位置に近いところに位置づけられる. たとえば, 図 6-13と図 6-14に示した症例は, 2つの異なるタイプの不正咬合に-5°のトルクがどのように反応するかを明らかに示している. 図 6-11 ブラケットアンギュレーション(角度).図 6-12 ブラケットトルク値(度数).

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