アレキサンダーディシプリン20の原則
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219協力を得る握手世界中のいろいろな国では異なる場合があるかもしれないが, 私は父から教わったテキサスの伝統的な作法を, 私の医院に治療に来るすべての患者に教えている. 握手は非言語的コミュニケーションの1種であり, ここでの原則で述べる一連の原則に準ずる行動と言える. そして, 私は弱く握る握手をする患者に会うと, いつも彼らに私が父から教わったことを言うのだ. 父はいつも私に, 手は強く握り, 相手の目を見て, 姿勢良く立って, そして笑顔を見せるように言った(笑顔は私がつけ足したのだが). そして私はいつもこう言う. 「いつか教授に紹介されるときとか, あるいは仕事を探すときなど, 状況がどうであれ最初の印象は君の握手なんだよ. 自信をもって前向きの姿勢で行こう」(図 20-12a). コミュニケーションの技術毎日の生活のなかで積極的な生き方をしていると, それはその人の人生を変えるほどの力になるのだろうか. RathとClifon6は著書のなかで, 「あなたのバケツにはどれくらい水が入っていますか」と問いかけている. 彼らは柄杓とバケツを例にした理論を説明している. つまり, それぞれの人は目に見えないバケツと目に見えない柄杓をもっている. 前向きな態度でほかの人に何かを言う人は, 聞き手のバケツを満たしている. 否定的な言い方をする人は, まさに正反対である. 聞き手のバケツを空っぽにしてしまうだけでなく, 話している自分自身のバケツも空にしているのだ. 矯正医は1日中バケツを満たす独特な立場にある. 患者だけでなく, 両親も積極的な刺激を必要としている. 同じことがスタッフにも言える. 意識してこれらのバケツを満たすことを試みていると, まわりの人々すべてに矯正医は良い影響を与えることができる. つまり, コミュニケーション, 生産性, 健康, そして幸福感を向上させるのだ. 目を見なさい. もし患者の幸福を心に留めておくならば, 動機づけの機会というのは矯正医が患者のチェアサイドに座った瞬間に訪れる. 患者の多くは何か言われる前にすぐに口を開こうとする. そんなとき私は「しばらく口を閉じていて. 私はあなたを見たいのです」と言う. 矯正医は患者の口のなかを見る前に, 目を見る時間をもつべきである. こんなちょっとしたことが, 矯正医に, 患者はタイポドントではなくて人間なのだということを思い起こさせる. 臨床家は, 医院の外でこの子どもに何が起きているのか知らない. 矯正医が患者と前向きに会話する時間はほんの少ししかない. その時間を有効に利用することは重要である. 会話はいつも個人情報から始まる. 学校, スポーツ, 音楽といった患者の日常生活や, 興味を起こさせるものは何でも質問しておくと役に立つ. 各々の患者を星に見立ててどこで輝いているかを心に留める. そしてこの情報は忘れないようにカルテに書いておく. 患者個人の人生における一般的な関心事を知っておこうとするのも有益である. 慎重に選んで話す言葉と声のトーンは, テレビのハイライト番組のように中身が濃く, 患者にやる気を起こさせ動機づけができる重要な要素だ. 水平的なコミュニケーション. 同じ目線の高さで話す, 水平的なコミュニケーションは, 重要なコミュニケーションのテクニックである(図 20-12b). 重要な内容の話をするとき, 矯正医が腰掛けに座り, 患者は診察チェアの上に起き上がる. 矯正医の目の高さが患者の目の高さよりも上である状況は避けなくてはならない. 彼らと話すときに横に立って話すことも避けるほうが良い. 良いコミュニケーションは, お互いに正直で双方向であるべきだ. そして矯正医は積極的な聞き手としての腕を磨かなくてはならない. 治療の処置内容についての説明が終わったら, 私は「何か質問がありますか」と言うのではなくて, 「どんな質問がありますか」と聞く. そこには重要な言葉づかいの違いがある. そして私は患者の言うことを聞くのだ. プログレスレポート. 患者と両親には治療経過について, その時々の状況を説明しておくべきである. 最新のデジタルカメラを利用すれば簡単に口腔内を撮ることができ, 洗面所の鏡の横に貼っておくようにと渡す. そうすれば彼らは自分の治療の進み具合をモニターできる. 図 20-12 (a)患者と握手をしているDr Alexander. (b)患者との間の水平的コミュニケーション.ab

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