CAD/CAM YEAR BOOK 2012
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10TECHNICAL REVIEW歯科用CAD/CAM最新事情と、日本の臨床家としての期待村岡正弘(東京都開業:東上野歯科クリニック)はじめに 昭和30年代生まれのわれわれが歯科医師になって以来しばらくは、審美修復といえばメタルセラミックスが全盛であった。卑近な話、セラミック包丁があるのだから、メタルに代わる白い材料が使えたらどんなに良いかと考えながらも、審美性を追求するならマージン部のみを陶材にするカラーレス処理で満足せざるを得ない状況が続いた。その後21世紀に入り、メタルセラミックスに代わり酸化ジルコニウム(ジルコニア)がセラミック修復の主役になり、さらには適合に「遊び」の許されないインプラント支台のロングスパンブリッジのフレームワークにまで利用されるようになるとは夢にも思わなかった(図1)。 ジルコニアの存在やその応用法は以前より知られており、産業界では内燃機関や高強度セラミック加工に応用されていた。しかし、それは大量生産の賜物であり、歯科のように少品目をカスタムメイドで精緻に加工するには、今日のようなコンピュータテクノロジーの進歩と、それに付随したCAD/CAMの発展を待たねばならなかった。産業界ではNC加工という、設計加工を数値化したコンピュータ支援による工作機械の運用が早くから本格化していたが、歯科臨床への導入は経済性の問題はもちろん、生体の有機的な形態をスキャンすることで生成される大容量データの高速処理をはじめとした総合的な関連技術の底上げがあってはじめて実現され得るものであった。たとえば一連の計測・スキャニングによるデジタイズは歯科特有のものであり、修復物の設計から加工データを受け渡されミクロン単位で造形する工作機械の精度や安定した材料の開発・供給も必須であった。 この誌面をごらんの諸氏は、すでに筆者以上に歯科におけるCAD/CAMシステムに通暁しておられることと思われる。そこで各システムについての詳細は本誌後半の製品紹介コーナーの執筆者各位に譲り、本稿では総論として、歯科用CAD/CAMの変遷と普及について日本国内と諸外国の事情をみていくことにしたい。歯科用CAD/CAMの変遷と普及1)初期の歯科用CAD/CAMを支えた2種のシステム 古くより、CAD/CAMシステムを歯科臨床に応用する試みは多数みられるが、実際の歯科治療に現在でも応用されているシステムのプロトタイプといえるのは、1985年にWerner H. Mörmann教授ら(スイス・チューリッヒ大学)がシーメンス社と共同で開発したCERECシステムであろう(図2)。 当時のコンピュータや光学センサーの処理能力、ハードウェアに制約されたソフトウェアの限界から、当初のシステムで製作された修復物は手作業によるものとの格差が大きかった。その後アップデートを重ね、現在のように臨床現場に普及するには約20年の歳月が必要とされたが、歯科用CAD/

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