CAD/CAM YEAR BOOK 2012
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19歯科用CAD/CAMシステムのオープン化による、歯科医療/歯科技工の次なるステージ今田智秀(株式会社データ・デザイン ヘルスケアグループはじめに 近年の歯科医療・歯科技工技術の進歩は著しく、デジタルエックス線装置や歯科用コーンビームCT(以下、CBCT)、および歯科用CAD/CAMシステムをはじめとした先進のデジタル機器によって、従来のアナログ作業をバラツキの少ないデジタル作業に置き換え、より高品質で安全な補綴物や治療を短期間で提供できるようになってきた。とくにインプラント治療・審美歯科治療・矯正歯科治療におけるデジタル機器の普及率は高まり、ジルコニアフレームの製作やインプラントカスタムアバットメント製作に歯科用CAD/CAMシステムは欠かすことのできない存在となってきた。 臨床用に歯科用CAD/CAMシステムが発表されてからすでに四半世紀が経つが、この10~15年の間に各歯科材料メーカーやインプラントメーカーがアイデアを出し合い積極的に改良を重ねてきた結果であると感じる。「デジタル・デンティストリー」(図1)という言葉が浸透してきたように、今後もますます先進のデジタル機器が歯科医院や歯科技工所に設置され、患者にとって最良の歯科治療を受けられる環境が整っていくであろう。 一方で、歯科技工士の高年齢化と、決して良いとはいえない歯科技工士を取り巻く労働環境によって、若い世代を中心に全体の歯科技工士数は減少傾向にあり、歯科技工所の大きな課題となっている。歯科用CAD/CAMの導入も、設備投資体力のある大手の歯科技工所もしくは自費診療の技工を中心に行っている限られた歯科技工所にとどまり、保険技工を専門にしている大半の歯科技工所では導入が進んでいない。 このような背景の中で、欧米をはじめ世界各国でCAD/CAMシステムのオープン化が急速に広がりはじめている。そこで本稿では以下、オープン化が広がり始めた背景を考え、今までの歯科用CAD/CAMシステムと現在拡大傾向にあるオープンシステムにはどのような違いがあるのか、またオープン化により歯科医療・歯科技工がどのように変わる可能性があるのかについて、日本国内における今後の展望も含めて述べていきたい。歯科用CAD/CAMシステムのオープン化とは 一般産業界で使用されている先端のCAD/CAM技術を歯科用に利用するという考えは1970年代から始まり、その後急速に歯科用CAD/CAMシステムの研究・開発が進んだ。歯科用CAD/CAMとして確立したのは、当時、新材料として注目されたジルコニアが歯科補綴物に利用されはじめた頃である。その過程で、各材料メーカーが自社の歯科材料を選択してもらうために、歯科用CAD/CAMシステムを独自に開発・改良し、歯科医院や歯科技工所に歯科補綴物を製作するフル・プロセスを提供した。材料メーカーが主導となり、歯科模型をデジタル

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