知っ得!納得! 健口免疫アプローチ
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本論 事例でわかる!健口免疫アプローチの実際序論 これだけは外せない!健口免疫学の基礎本書の理解を深める参考文献ガイド27本事例から学ぶ健口免疫アプローチ本論 事例でわかる! 健口免疫アプローチの実際1 疲れと歯肉症状、お口の渇きはどんな関係があるの? 疲労の蓄積により生体が過度なストレス状態になると自律神経系のバランスが崩れ(=交感神経系が強くはたらき)、顆粒球の暴発とともに大量の活性酸素が産生され身体が錆びる(=酸化する)状態に陥ります。身体は酸化環境下に弱いため、その状態が長く続くと、歯肉の炎症はもちろん、胃腸炎を起こしたり、大病にかかったりします。口の渇き(=唾液粘性の変化)に関しても、自律神経系バランスの崩壊が深くかかわっています。交感神経系に支配される唾液のタンパク分泌(とくにムチンのように粘度の高い糖タンパク)が盛んになることで口の中がベトつきます(=渇いた感覚)。2 刺激の強い(アルコール系)うがい液やペーストの使用を控える理由は? アルコールによる脱水反応が歯肉表層を過剰に刺激している可能性もあるので、保険適応の含嗽薬(アズレンスルホン酸製剤など)にも低刺激性(アルコール度が低い)のものが出ており、そちらに変更するか、今使用している薬品の濃度調整をアドバイスしましょう。3 抗酸化食品を勧めるのはなぜ? 上記1で解説したストレス状態によって身体が酸化環境下にある状態を改善させるためです。抗酸化食品の代表格、野菜や果物(とくにその作用の強い緑黄色野菜)の摂取を勧めましょう。[解説] 患者さんの訴え、問診から得られた情報と現況(図6、7)から「ストレス性歯周炎」と断定し話を進めています。心身ともにストレスは免疫低下のスタートといっても過言ではありません。 交感神経系が強くはたらき出すと顆粒球は口腔内常在菌も攻撃ターゲットにするので、口腔局所では歯肉炎(易出血状態)など生体防御反応(=免疫応答)がはじまります。歯肉表層では炎症性細胞が集積~白血球の遊走が始まります。組織変性が進むと神経性疼痛に関してもナイーブになり、凍みる(=知覚過敏)ことが多くなります。崩れた自律神経系のバランスを戻すには、副交感神経系を活発にはたらかせることが問題解決の第一歩です。 問診で得られた患者の生活スタイルを修正してあげるのも健口免疫アプローチとしては大切なことです。歯科の専門家として、使用する洗口液の使い方をアドバイスすることもポイントです。さらに今回のケースでは患者情報③の生理の問題も大なり小なりかかわっています。生理に入り1週間(……ということはそろそろ排卵日になる頃)では、常在バクテリアバランスが大きく変化するタイミング(歯肉の免疫マーカーが激しく変化する頃……)と考えられます。 すべての症状の発現には理由があり、生体は正直に反応するものです。原因と生体の反応(=免疫応答)を1つひとつ明らかにし、それらをしっかり伝えていく(指導していく)積み重ねこそ、健口免疫アプローチの真骨頂といえるでしょう。ストレス下では、生体はダイナミックに変化します。もちろん、口腔内も例外ではありません。ストレス性歯周炎の典型的な症例では、ストレスに対する口腔免疫メカニズムを理解してもらいつつ、患者さんのトラブルに対して的確なアドバイスをしてあげましょう。

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