知っ得!納得! 健口免疫アプローチ
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本論 事例でわかる!健口免疫アプローチの実際序論 これだけは外せない!健口免疫学の基礎本書の理解を深める参考文献ガイド35本事例から学ぶ健口免疫アプローチ本論 事例でわかる! 健口免疫アプローチの実際[解説] 歯周病/糖尿病のコントロールは、健口免疫学の根本理念(患者/歯科衛生士/歯科医師=三位一体で向かい合う)がまさに問われます。臨床症状の出た場合のコントロールは歯科臨床のなかでももっとも困難なケースと筆者は考えます。問題解決に向かってチームで取り組むことを忘れないでください。 ところで、健口免疫アプローチは患者さんへのモチベート指導がその大半ですが、恐怖観念を多用するのはできる限り避けましょう。こわい話ばかり患者さんにたたみかけると、病気に立ち向かう気力をも奪ってしまうかもしれません。注意喚起も段階を経て少しずつアドバイスしてください。 たとえば、この患者さんは、すでに目に症状が出てきていましたが、これは糖尿病が長期にわたり体中の微小血管を徐々に破壊していった結果を意味します。本来ならば「放っておくと四肢末端の壊死、さらには命の危険にもさらされる!」と事態の深刻さを伝えなければいけないのかもしれません。しかし、歯科医院での初回診療時にすべてをひとまとめに話してはいけません。もちろん末梢血管の破壊は歯周組織にも及んでいる…… 糖尿病の悪化は目、口、体中のさまざまな臓器を壊していく、そのひとつとして口腔にも重大な傷害を及ぼすことになると、きちんと説明すべきではありますが、あせらず段階を経てアプローチしましょう。内科的なコントロール具合を注視しながら口腔治療(歯周治療)に臨むべき症例では、「痛いのは歯だが、痛くさせている原因は土台の“歯肉”にあり、歯肉の環境を悪くしている根本原因は全身(高血圧、糖尿病などの基礎疾患)にある……」局所と全身の関係を把握し、同時に診ていかなければなりません。1 “歯周病は血液の病気”ってどういうこと? 糖尿病とは血液中の糖分が過剰になり尿中にあふれ出てくる病気です。口腔常在菌(とくに歯周病菌)の多くは血液中の糖分を栄養源にしている(=血液の病気)わけですから、この関係を繰り返しモチベーションすることが大切です。患者さんは「歯周病は血液の病気でもある」という認識をもってはじめて、糖尿病と歯周病の深い結びつきを現実的に受け止めてくれるでしょう。また、この患者さんのように、糖尿病は明らかに生活習慣型(=2型糖尿病※)なので、メタボリックシンドローム(メタボ)関連疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症とその合併症)とともに歯周病も合併症のひとつとして向き合ってもらうような意識改革が必要です。※ 日本人の95%超は、生活習慣型とよばれる2型糖尿病といわれています。日常の生活習慣を1つひとつ修正指導する…… そのなかに口腔ケアが含まれてきます。一方、1型糖尿病とは免疫異常やウイルス感染などにより膵臓のランゲルハンス細胞が破壊されて悪化・進行(インスリンが正常に産生されなくなる)するもので、肥満や生活習慣とは関係がないタイプです。2 関係者が一丸となるなかで、とくに歯科としてするべきことは? 「凍みる、痛い、出血」と訴える原因の多くは歯周病に起因しますが、根底にある糖尿病の存在を絶対に忘れてはいけません。患者、歯科衛生士、歯科医師、さらに内科主治医も含め、それぞれの立場から病気に向かい合うことが重要です。歯科としては、積極的な治療(抜髄や咬合調整)は最小限度とし、患者さんをモチベートし治療への協力を最大限引き出すことを心がけましょう。

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