今、問われる患者目線のインプラントとは?
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237SCA Kit 上顎臼歯部でインプラント治療を行う際,問題となるのが骨の質が脆弱であることや上顎洞の影響による骨の垂直的な量の問題である.中でも,上顎洞については歯の喪失により含気化が進み,結果的に歯槽骨の垂直的な減少をもたらす. したがって,インプラント治療を適応する際には,インプラントが埋入できるように上顎洞底挙上術(サイナスリフト)を行うか,グラフトレス(インプラントの傾斜埋入またはショートインプラントの適応)の治療を適応するかを決定する.上顎洞と前方歯根との間に埋入のためのスペースがあれば,この部位にインプラントの傾斜埋入を行う.また Renouard1)によれば,上顎洞まで6mmの垂直的距離があれば,ショートインプラントを適応する.しかし,それらができない状況であればサイナスリフトを適応するとしている.このように,サイナスリフトを応用する際には,さまざまな留意点を把握しておく必要がある(表1).はじめに サイナスリフトの外科手技は1974年にHiltによって始められ,BoyneとJames2)によって記述された側方開窓術と,Summers3)によって報告されたオステオトームテクニックによるソケットリフト(垂直的アプローチ)の2つがよく知られており,今日では日常的に使用されている. 本稿では,ソケットリフトの変法であるSCA Kitを用いた低侵襲な上顎洞の挙上を中心に述べる. 今回報告する主眼のソケットリフトは,上顎洞底を槌打・若木骨折させ,その空間に骨移植を行う従来のオステオトームテクニックと異なり,SCA Kit(Sinus Crestal Approach Kit)と呼ばれる器具を使用する低侵襲のソケットリフトである. 本セット(SCA Kit)はS-Reamer,ストッパー,深度測定ゲージ,ボーンキャリア,ボーンコンデンサー,ボーンスプレッダーから構成されており,次のようなすぐれた特長がある(図1).SCA Kitを用いた低侵襲のソケットリフト中村社綱(Nakamura, Takatsuna)(熊本県熊本市開業:インプラントセンター・九州)1975年 神奈川歯科大学卒業同年 九州大学歯学部口腔外科学教室入局1977年 九州大学文部教官助手1980年 九州大学歯学部口腔外科学教室専攻生熊本県にて中村歯科医院開設1998年 神奈川歯科大学口腔解剖学教室研究生1994年 学位取得(神奈川歯科大学)1998年 インプラントセンター・九州開設現在:九州大学臨床教授,デンタルコンセプト21最高顧問低侵襲のソケットリフト

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