図解 歯科医院の人事労務に関する50の留意点
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143内定を取り消すことはできるか? 2008年秋のリーマン・ショック後、企業が翌2009年4月入社予定の大学生の内定を取り消す、いわゆる「内定切り」が相次ぎ、社会問題化したことがありました。2011年の東日本大震災の後にも、同様の問題が生じており、内定を取り消された学生が企業を訴える、というケースまで出てきています。 では、どのような場合であれば、このような紛争にまでならずに内定を取り消すことが認められるのでしょうか。 一般に、歯科医院側が応募者に内定した旨を通知したことに対し、応募者側から内定を承諾した旨の回答があった時点で、労働契約は成立しているものとされます。内定段階であっても、労働契約が成立しているということは、内定の取り消しは労働契約の解約にあたりますので、すでに雇い入れているスタッフを解雇するのと同じ位置づけとされます。つまり、それ相当の合理的な理由がなければ、内定の取り消しは認められないということです。 合理的理由がないにもかかわらず、医院側が一方的に内定の取り消しをしてしまうと、後に内定取り消し無効をめぐってトラブルに発展する可能性もあり、裁判になった場合には医院側が敗訴してしまう、ということもあり得ます。 そこで、内定の取り消しが認められる合理的理由としては、採用内定当時に知ることができず、また知ることが期待できないような事情であって、たとえば勤務開始日までに学校を卒業できなかった場合であるとか、内定者が重大な犯罪行為をした場合などが、これに該当するとされています。

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