そのままつかえる照会状の書き方
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59糖尿病そのままつかえる照会状の書き方❹抜歯・インプラント・歯科小手術・歯周外科など観血的手術に対応❶歯科外科処置を行う場合は、日本糖尿病学会の血糖コントロール指標で「良」以上の範囲にコントロールされているのが望ましい(HbA1c・NGSP 6.9%未満、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満/表7)。血糖が非常に高いと重症感染症を起こす危険があるので、外科処置は禁忌である。❷処方薬を手術当日も服薬するよう指示する。❸昼食や夕食前などの空腹時のアポイントを避ける。手術の前に必ず食事を摂るよう指示し、空腹でないことを確認する。❹慢性合併症があるときには、その重症度を評価し血圧、心電図をモニターする。❺血糖のコントロールが十分でない場合には、抗菌薬の投与を十分に行う(術前・術後投与)。❻治療中のストレスや不安を減らす。❼エピネフリン含有局所麻酔については、一時的な血糖値の上昇がみられるという報告があるものの、糖尿病のコントロールが良好な場合(糖尿病ガイドランの優または良、尿ケトン体が陰性)は問題ない。しかし、脳梗塞、心筋梗塞、網膜症、腎症などの合併症がある場合には注意する。❽低血糖発作を起こした場合 緊急に血糖値をあげないと昏睡状態に陥る。静脈ラインが確保されている場合には、50%グルコースを20mL以上投与する。経口の場合は、手術時の注意事項手術時の注意事項❶低血糖性ショック 手術前に食事を摂っていない場合や食欲の低下などが原因で低血糖症を起こす。血糖値が50mg/dL以下になると大脳は正常な機能を行えない。そのため、低血糖になるとあくび、悪心などの大脳の機能低下症状や低血糖に対処しようと交感神経が刺激され、発汗、頻脈、過呼吸などの症状が現れる。さらに症状が悪化すると、意識消失、痙れん、低血圧となり、死に至る場合もある。❷過血糖による昏睡 コントロール不良の糖尿病患者では、グルコースの代わりにエネルギー源として脂肪が代謝され、過血糖の状態が長期にわたるとアセトンなどのケトン体の血中濃度が上昇して、代謝性ケトアシドーシスとなる。そのため嘔気、Kussmaul呼吸(深くて早い呼吸)、果実臭の呼気(アセトンが呼気中に排出されるため)、ケトン尿などの症状が起こり、悪化すると昏睡状態となり死に至る。 血糖値のコントロールが比較的良好な場合でも、手術侵襲、麻酔、ストレスにより各種ホルモンやカテコラミンの分泌が亢進され、インスリン作用が低下し高血糖状態になることがある(外科的糖尿病)。❸手術後疼痛などによる摂食障害❹易感染性、感染の重症化 高血糖状態では白血球の食作用の低下、細小血管の変化による局所の血流量の減少と、それに伴う損傷組織への酸素供給量が減少し、感染を起こしやすい。コントロール不良患者では、感染が起こると血糖値を上昇させるカテコラミンや糖質コルチコイドなどのホルモンの分泌が増加し、さらに高血糖状態となり感染が悪化する。血糖値のコントロールが悪い患者の抜歯を行った後、炎症が重症化して口腔蜂窩織炎を起こす場合があるので注意する(図1)。❺手術創の治癒の遷延化、ドライソケット❻慢性合併症の悪化手術の問題点手術の問題点

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