乳歯列期における外傷歯の診断と治療
8/8

095Ⅳ‐5 乳歯外傷の後継永久歯への影響②Ⅳ 乳歯外傷の予後<硬組織形成直前の外傷の予後:図①><エナメル基質形成初期の外傷の予後:図②>1222.エナメル基質形成期(初期)の外傷による基本病変(図②)☆エナメル質では外力が加わった咬頭全体に著しいエナメル質減形成が惹起される.外力によりその咬頭の広範囲でエナメル芽細胞が障害され,エナメル基質形成障害やエナメル質石灰化不全が惹起される. ☆象牙質では,外傷を受けた咬頭の広範囲に不規則象牙質が厚く形成される.ときに外力により象牙芽細胞(層)の象牙質からの剥離が生じ,その領域は剥離した象牙芽細胞により,細胞封入を伴う不規則象牙質を形成する.その後,経日的に象牙芽細胞の修復(再生)に伴い規則的な象牙質を形成するようになる.☆萌出への影響は比較的は少ない. 3.エナメル基質形成期(中・後期)の外傷による基本病変(図③~⑤) この時期は歯冠の喉頭部エナメル質,象牙質ともに比較的硬くなっており,歯冠部への外力は歯胚全体を歪ませ,歯冠の傾斜,偏位を生じたり,周囲歯槽骨との接触を引き起こし,広い範囲に硬組織形成障害が生じる.とくに歯頚側の歯質はいまだ薄く,石灰化も十分でないために障害されやすい.☆エナメル質では,エナメル芽細胞やエナメル基質を損傷し,エナメル基質形成障害とエナメル質石灰化不全の両方が惹起される.さらに,損傷を受けた歯質は萌出するまでの間に破歯細胞による歯質の吸収が生じる可能性もあり,エナメル質から象牙質に至る歯質の吸収による硬組織欠損が惹起される.☆象牙質では歯冠の広範囲に不規則象牙質が形成される.すなわち,外力が加わると象牙芽細胞層の象牙質から剥離が生じ,細胞封入を伴う不規則象牙質が形成される.経日的に象牙芽細胞は規則的配列を回復し,規則的な象牙質を形成する.☆萌出への影響がみられ,歯頚側の損傷,ヘルトヴィッヒ(Hertwig)の上皮鞘の損傷を引き起こして,骨性癒着(ankylosis)を生じ,萌出障害につながる可能性がある.歯冠の傾斜・偏位を招いた場合も萌出障害が生じる.⇒次頁へつづく2

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です