咬合再構成 その理論と臨床
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62PartⅡ:咬合再構成における問題と対応さまざまな咬合高径の設定方法 過去から現在に至るまでいろいろな咬合高径の設定方法があったが,代表的なものは以下の5つである.では,これらが本当に有歯顎において臨床応用できたかどうかをこれから解説する.安静位空隙を用いる方法(図8) 口唇を軽く閉じると,上下顎歯は咬合しない.唾を飲み込んだり嚥下すると中心咬合位に近づくが,その両者の間隙が安静位空隙である.この方法で咬合高径を求めるのは総義歯では可能だが,実は有歯顎においては難しい. 基本的に成人の男性・女性の安静位空隙は少し違うが,およそ2~3mmの間になる.また,これはコケイジャン(白人)とモンゴリアン(黄色人種)で少し違うが,日本人の安静位空隙は大体2~2.8 mmといわれている. 基本的に安静位で「むむむむ」と軽く唇を閉じる.すると,中切歯の位置はドライウエットラインのやや内側にある.このときの上下間のスペースが安静位空隙である.しかし,無歯顎なら取り出して蝋堤で観察できるが,有歯顎では安静位空隙は観察するのには無理がある.オーラルアプライアンスを用いる方法(図9a,b) オーラルアプライアンス(器具)で咬合高径を決めることはできないのか? スプリントを入れて患者が快適ならば,その咬合高径で補綴物をつくれないだろうか. 図9a,bの患者は「先生,これがないと寝られません」と十数年もオーラルアプライアンスを装着し続けている.しかもさまざまな問題が歯にあるので,フルマウスで修復しなければならない.咬合高径を決定するのに,スプリントを薄く(最低でも厚さ1mm以内に)し,図9bのようなマテリアルを咬合採得し,咬合器にマウントした.この水平・垂直咬合位置関係でワックスアップして,プロビジョナルレストレーションに移行する方法が考えられる.しかしよくよく考えると,スプリントは本来そのような目的ではなく,顎が痛い顎関節症の患者に使うもののはずである.経皮内神経電気刺激(図10) Jankelsonが行ったマイオモニターは,咬筋などいろいろな筋・咀嚼筋を電気刺激して,安定して反復可能な位置を探すものである.いわゆる経皮内神経電気刺激で,以前はよく行われていた.筋の等尺性収縮を利用して中心咬合位へ誘導するというのが,Jankelsonのマイオモ図7 有歯顎の場合は,咬合高径を挙上すれば,①に近い.適切な咬合高径のオーバーラップは,②の位置,上顎前歯の舌面の三等分した真ん中にコンタクトして,ここにアンテリアカップリングするのが理想形である.咬合高径が低くなると③の位置,咬合高径が高くなると①の位置にくるということがいえる.咬合高径①②③図8 安静位空隙を用いる方法.図9a,b オーラルアプライアンスを用いる方法.さまざまな咬合高径の設定方法ba

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