その補綴に根拠はあるか
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治療選択のコンセプト治療計画の立案初期治療・前処置支台歯の選択設計・製作メインテナンス・経過観察咬合調整 天然歯列において、口腔の健康を維持するにはう蝕と歯周疾患には積極的に対処すべきであるが、補綴装置という人工物を用いた処置を前提にした場合の歯周治療には、表1に示したように、さらにいくつかの目的が付け加わる。補綴処置を容易にする 臨床においては、う蝕が歯肉縁下に及んでいる症例に遭遇する頻度が非常に高い。このような場合「健全な歯質に補綴装置のマージンを設定する」の原則1ならびに、生物学的幅径(biologic width、図1)4獲得の原則からも、歯周処置をせずに補綴することは困難であり、無理が多く予知性は低い。生物学的幅径の重要性に関しては、数多くの報告5-7がみられる。組織の抵抗性を高める 付着歯肉が確保されていることは補綴処置後のメインテナンスにおいて重要になる8。MaynardとWilson9,10は、歯の歯肉溝にマージンを設定する際には5mm以上の角化歯肉が必要であるとしている(図2、3)。インプラントの周囲に付着歯肉が必要か否かの議論がなされた時期もあった11。また、天然歯に比較するとインプラントでは、プラークの付着に基因する炎症に対する抵抗が低いのではないかと考えられていたが、必ずしもそうではないことが報告されている12。 しかしながら、インプラント周囲に付着歯肉がない症例では炎症が生じやすく、患者自身の清掃も難しくなることは明らかである。言い換えれば、付着補綴処置やメインテナンスを容易にしたり、審美性の改善のために不可欠だからですCheck!1歯周治療はなぜ重要?表1 補綴処置を前提にした歯周治療の目的補綴における生物学的幅径の意義 生物学的幅径については「生物学的幅径は結合組織付着、上皮付着、歯肉溝を合わせた総称として用い、その幅は最小3mmであり(図1)、歯槽骨頂に損傷がない限り辺縁歯肉は退縮しない」とされている5。逆に、補綴装置を設定する場合にはそのマージンは装着時に骨頂から3mmは離れていないと、将来的に生物学的幅径が獲得されるように骨が吸収し、歯肉退縮してマージンが露出する可能性がある。このような場合には術前に適切な生物学的な幅径を得るための処置が必要となり、それには歯内の根尖側移動術による歯冠延長6あるいは歯そのものの挺出7が考えられる。知っておこう図1 生物学的幅径の定義(文献3より引用改変)。非付着性付着歯肉付着性付着歯肉歯肉溝上皮付着結合組織付着1mm1mm1mmMGJ補綴処置(印象など)を容易にする1組織の抵抗性を高める(付着歯肉の存在)2メインテナンスを容易にする3審美性(外観)を改善する430

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