改定新版 インプラント治療に役立つ外科基本手技
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65Chapter8結 紮くと、ループ側の糸に余裕が生じ、ループが作りやすくなる。また、縫合のループを作った後、自由糸端を持針器で把持する際には、その先端を把持するのがコツである。自由糸端を短くしておけば、縫合糸端の先端のブレが少なく把持しやすい。さらに、先端を把持することで縫合糸をループ内から抜く際に、自由糸端が二重にならず、スムーズに抜くことができる。もし縫合糸の途中をつかむと、自由糸端をループから抜いたときに折れ曲がって二重になり、ループ内から抜けずに絡み合ってうまく結紮できなくなる(図8-7)。 (2)口腔内の縫合、とりわけ下顎臼歯部では視野や器具の操作性が悪く、舌、頬粘膜、鉤などに自由糸端が張り付いたり、あるいは口腔内に貯留した唾液や血液が邪魔をして先端がつかみにくく苦労する場合も多い。 さらに、開口量が少なかったり、口角が邪魔をして糸の先端がつかみにくい場合もある。このような場合、視野の良い口腔外で結節のループを作っておいてから、ループを移動して縫合結節のみを口腔内で作るようにすると結紮が容易になる。ここでの注意点は、自由糸端を口腔外に残したまま結紮しないことである。これでは無駄な糸が長くなってしまう。先端を把持して締め込む際に、縫合糸をつかんだ持針器先端を縫合創に接近させるようにし、左手でつかんだ糸のほうを牽引すれば、自由糸端が短くなり無駄な糸が少なくてすむ。第1の結紮ができてしまえば、自由糸端の先端は口腔内でも安定しているので、第二結紮以降の自由糸端の把持は口腔内でも手間取らない。 また、縫合時の視野が悪いときは、患者の首を術者側に傾けさせて視線が口角などに遮られないようにすると縫合しやすく、操作中に患者の口角を糸で擦り上げて苦痛を与えることも少なくなる。ただし、口腔内での縫合糸の締め込みは、持針器の先端が不良だと糸が滑って咽頭などを損傷する可能性がある。その場に代替えの持針器がない場合は、縫合糸が無駄になるのを覚悟で、縫合結節は口腔外で作るほうが安全である。いずれにしろ、持針器先端のメインテナンスには十分留意しなければならない。自由糸端を把持する際の注意点図8-7 自由糸端を長く残したままその途中を持針器でつかむと、自由糸端がループを抜けきらずに残ってしまい操作に手間取る。

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