21世紀のペリオドントロジー ダイジェスト
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1620世紀の常識(1975年頃)21世紀の常識歯周病の原因菌は、10数種の歯周病原性菌 歯周病菌は嫌気性菌(酸素を代謝できないため空気中では生育できない)のため、口腔外での培養は困難でした。しかし、嫌気培養法の発達によって、1975年頃から嫌気性菌が検出できるようになりました。重度の歯周病患者からはPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)やPrevotella intermedia、Fusobacterium nucleatum、Aggregatibacter actinomycetemcomitansなど、10数種の嫌気性菌が高頻度で検出されたため、これらの菌種が歯周病に関係していると考えられました。しかし、動物を使った歯周病モデルがまだ存在しなかったために、これらの菌種が本当に歯周病を起こすかどうかはわかりませんでした。そのため、これらの菌種は歯周病菌とは呼ばれず、歯周病原性菌、あるいは歯周病関連菌と呼ばれました。そして、バイオフィルムには善玉菌と悪玉菌が存在すると考えられるようになりました1)。 マウスの腹腔内にP. gingivalis(図1-2)を感染させると、他の菌種では見られないような重度の炎症を引き起こすため、この菌種がもっとも高い歯周病原性をもつと考えられました4)。歯周病の原因菌は、レッドコンプレックス レッドコンプレックスと呼ばれるP. gingivalis、Tannerella forsythia (T. forsythia)、Treponema denticola (T. denticola) の3菌種が歯周病菌とされています(詳細は第2章「歯周病の最新病因論Ⅰ」(P.25)で述べます)5)。歯周病原性菌は、中年期に感染する 嫌気性菌を培養できるようになったものの、この時代の細菌検査法の感度は鈍く、健康な歯周組織に潜むわずかな量の嫌気性菌は検出できませんでした。歯周炎の発症が間近となり、歯周病原性菌の数が増えるまでは検出できなかったのです。そのため、当時は歯周病原性菌が感染して間もなく歯周炎が発症するとされ、健康な歯周組織には歯周病菌は感染していないと考えられていました1)。ですから、歯周病好発年齢である中年期前に歯周病菌がどこからか唾液感染すると推測されていました。歯周病菌は、思春期前後に感染する T. forsythiaとT. denticolaは小中高生の頃に感染し、P. gingivalisは18歳以降に感染します(詳細は第2章「歯周病の最新病因論Ⅰ」(P.27)で述べます)。歯周病原性菌には、部位特異性がある 細菌検査法の感度が低かったせいで、歯周病菌は深いポケット(菌数が多い)からは検出されるが、浅いポケット(菌数が少ない)からは検出されませんでした。そのため歯周病菌が定着しやすい歯と、しにくい歯があると考えられ、歯周病発症には部位特異性があるとされていました1)。歯周病原性菌に部位特異性はない 高感度になった細菌DNA検査によって、歯周病菌の感染には、部位特異性はないことが示されました4)。歯周病菌は唾液によって、すべての歯の歯周組織に感染します。図1-2 最強の歯周病菌。Porphyromonas gingivalis。●歯周病の原因菌・感染時期・部位特異性

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