21世紀のペリオドントロジー ダイジェスト
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17●歯周病に対する抵抗力20世紀の常識(1990年頃)21世紀の常識歯周病に対する歯周組織の抵抗力には個人差あり 歯周病菌のDNAを検出する方法が開発され(これは画期的な発明)、これまでの培養法による細菌検査と比べて、はるかに高感度で歯周病菌の検出が行えるようになりました。 その結果、歯周病菌が検出されるにもかかわらず、歯周病の症状を示していない人が多数いることがわかりました。 また、同じ歯周病菌の感染を受けても、歯周病の重症度は患者さんごとに大きく異なることから、歯周組織の抵抗力には個人差があり、これが歯周病の発症・進行を左右する原因とされました3)。歯周病はバイオフィルムの病原性の変化で発症する 全身と歯周組織の免疫力と抵抗力が同じで、バイオフィルムにも同じ歯周病菌がいるAさんとBさんがいます。同じ歯周病菌がいるからといって、バイオフィルムの病原性は同じとは言えません。バイオフィルムの病原性は歯周ポケットの状態によって変わるのです。とくに、ポケットから出血があるとき、バイオフィルムは高い病原性をもつようになり、歯周病は進行します(詳細は第2、3章で述べます)。 20世紀には、バイオフィルムの病原性が変化することは知られていなかったので、同じ歯周病菌の感染でも歯周病の重症度が異なるのは、歯周組織の抵抗力の個人差とされたのです。しかし、歯周病の発症・進行には歯周組織の抵抗力の個人差も関係していることは確かです(詳細は第2、3章で述べます)。若年性歯周炎の原因はA.a.菌 20世紀には、若年性歯周炎はA. actinomycetem-comitans(A.a.菌)の感染で起こると考えられていました。しかし、健康な歯周組織をもつ若者からも高頻度でA.a.菌が検出されることが明らかになったため、この菌の病原性が疑問視されるようになりました。1990年代には若年性歯周炎(現在は「侵襲性歯周炎」に名称変更)は歯周病菌の病原性の高・低よりも、患者さんの遺伝的な要因が大きく関係しているとされました。この考え方は21世紀の今でも変わっていません2)。侵襲性歯周炎の原因は、遺伝的要因による それまで若年性歯周炎と呼ばれていた歯周病が、1990年代後半には侵襲性歯周炎と呼ばれるようになり、その原因は、宿主の抵抗力が弱いため、プラーク細菌の攻撃によって簡単に組織破壊を起こすためと考えられるようになりました。 このような背景から、各個人の免疫力の差、あるいは遺伝的な要因が歯周病感受性(歯周病のなりやすさ)に影響を与えているとする考えがクローズアップされています2)。しかし、侵襲性歯周炎の原因はこれからの研究課題です。歯周病の常識はどんどん新しくなってるんだね!!

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