インプラントの長期予後確立に向けた治療戦略
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天然歯とインプラントの共存佐々木 猛天然歯を良好な状態に改善する 天然歯とインプラントを長期にわたって良好に共存させていくためには、まず歯周組織の問題などを解決して、天然歯を清掃しやすい状態に整えることが不可欠である。そのうえで清掃しやすいインプラント周囲環境を獲得し3)、天然歯と協調して咬合を安定させるインプラント治療を行うことが求められる(図5-a、b)。健康な歯周組織は歯、歯肉、骨の組織に極端な段差がなく、連続性を有しており、炎症と力のコントロールを行いやすい状態であるが、う触や歯周疾患などが進行するとこれらの組織の連続性が失われ、疾病がさらに増悪する危険性が高くなる(図6-a、b)。したがって、組織の連続性を回復し、清掃性の高い歯周環境を確立することが治療の目標となる。天然歯とインプラントの共存─インプラントの特徴を知る─ インプラント‐天然歯間あるいはインプラント‐インプラント間の骨や歯肉に段差があると、インプラント周囲の清掃性が低下し、インプラント周囲炎を引き起こす危険性が高くなるため、インプラントにおいても天然歯同様、組織の連続性を確保することが非常に重要である(図7-a、b)。そのなかでも骨の連続性がもっとも重要であるが、骨レベルを整えるためには、インプラントの特性を十分に理解し、それぞれの状況に応じた対応が求められる。 天然歯とインプラントには多くの相違点があるが、特に①生物学的幅径(biologic width)、②周囲組織(付着、血管)、③歯肉貫通部の形態、④歯根膜の有無における違いは、臨床結果に大きく影響を与える因子であるため図4-a、b インプラント治療の目的は疾患などで失われた機能と審美の回復と、欠損をそれ以上拡大しないことである。図5-a、b 術後22年経過症例。機械研磨表面のインプラントであるが、何の問題も生じていない。天然歯およびインプラント周囲組織の清掃性を向上させ、両者を協調させて咬合の安定を図ることが治療結果の長期的維持につながる。図6-a、b 健康な歯および歯周組織では、歯列、歯肉、骨の各組織に連続性がみられ、炎症と力のコントロールを図りやすい状態であるが、疾患が進行するとこれらの組織の連続性が失われ、病状はさらに増悪していく。aaabbb13

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