インプラントの長期予後確立に向けた治療戦略
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インプラント治療38年を振り返って─1ピースインプラントの臨床的考察について─糸瀬正通侵襲なインプラント手術が可能となってきている。筆者はピエゾをスターティングホール形成時方向修正、SFE、VRA、ソケットエクスパンジョン、インプラント周囲炎など、数多くの術式に応用している。38年の経験をもとに現在行っている「生体主導型インプラント治療」 筆者は38年間の長期経過から、天然歯とインプラントが混在する治療において、咬合治療の重要性を痛感し、その反省から健全に天然歯列に近い位置にインプラント植立を行う生体主導型インプラント治療を現在目指している。生体主導型インプラント治療は、咀嚼筋、顎関節症のスプリント療法による咬合誘導、TAPインプラント矯正を含めた歯科矯正治療、残存天然歯の歯周治療、GTR、欠損顎堤への歯槽堤増大術、結合組織移植術などの診査項目を洗い出し、その処置をインプラント治療の前処置として行う手技をともなった、生体に優しい欠損補綴治療である。 1990年以降、インプラント周囲軟組織、生物学的幅径、インプラント間乳頭、インプラント間距離、マイクロギャップの位置、インプラント体表面性状、形態、アバットメントの形態などに関する研究論文が数多く発表され、近年では審美性を考慮したインプラント修復治療の予知性に関する評価が確立されつつある。 インプラント周囲炎を惹起する要因はさまざま考えられるが、アバットメントはインプラント体のプラットフォームより小さい径を使用するプラットフォームスイッチ、インターナルテーパージョイント、スレッドの改良、浅めのマージン設定などで、多少なりとも解消されていくと考える。 顎骨再建には、約20年前より骨形成能を有する自家骨と、骨誘導能を有する他家骨、異種骨、骨伝導能を有する吸収性HA、非吸収性HA、β-TCPなどを混和して使用してきた。また8年前より、成長因子である血液成分のPRP、PRFを骨移植材料に混和することにより、骨再生促進を図るようになった。将来、移植材料はメンブレンを使用しなくてもよい形状賦活性、保持性を有し、さらに骨のモデリング素材として骨代替材料の機能を有し、経年的に生じるリモデリングにも対応するものが開発されることを期待している。 また、フィクスチャーの表面処理やインプラント窩に合成タンパクなどを使用することによって早期のオッセオインテグレーションが可能な時代も近いと期待している。1980年代に行ってきたバイオセラムインプラ症例1-a~d CBCT導入(10年前)以前にサージカルガイド製作のもと、骨の中央に埋入した症例の術後21年の状態。本症例を含めほとんどの症例で、下顎臼歯部において、舌側寄りの埋入となっていた。症例2-a、b Lateral Approach による上顎洞底挙上術(SFE)を行った症例の術後14年の状態。骨移植材料は、フィクスチャー周囲には骨形成能を有する自家骨を填入した。コンポジットボーンは、骨誘導能を有する他家骨、異種骨と骨伝導能を有するHAの混合であれば、経過良好である。CBCT導入(10年前)以前にサージカルガイド製作のもと、骨の中央に埋入した症例(症例1-a~d)Lateral Approach による上顎洞底挙上術(SFE)を行った症例(症例2-a、b)abcdab776639

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