インプラントの長期予後確立に向けた治療戦略
5/6

正会員コンテスト欠損歯列におけるインプラント治療 と矯正治療の組み立て─タイミングと治療意義─金成雅彦 Masahiko Kanenari (山口県開業)1991年 九州歯科大学卒業1995年 クリスタル歯科開業九州歯科大学非常勤講師IPOI学会(近未来オステオインプラント学会)指導医/中国支部会支部長、JUC会員、AAP会員はじめに 歯の欠損状態は患者によりさまざまな状態を呈する。喪失した歯が多くなればなるほど、歯科医師の介入する治療内容も複雑化するだろう。歯科の治療ステップを示している表1の中でも、矯正治療、歯周外科処置、インプラント治療のステップにおける治療の組み立て方はそれぞれの治療介入のタイミングが難しく、専門医間でも意見が分かれる。われわれ臨床家は総合的な治療を目指し、多岐にわたる治療方法を用いることで、一歯科医師が複雑な治療ステップを紐解き、明解な治療意義の下で診療を進めていくことができる。 そこで、本稿では矯正治療とインプラント治療のステップが混在する治療の組み立て方を考察してみたい。表4 TADとインプラントを利用した矯正治療の意義と問題点表2 絶対的固定源(TADおよびインプラント)の適応症TAD矯正用インプラントをアンカーにし、先に歯を移動させてからインプラントを埋入するインプラント矯正治療後の補綴位置を想定して埋入したインプラントをアンカーにして歯を移動させる・ 水平的な顎位を大幅に変更する場合・ 安定した垂直的な咬合支持が早期に必要な場合・ 三次元的な矯正後の歯列の位置を予見できない場合・ 垂直的な咬合高径を大きく増加させる場合・ 早期に矯正治療を開始する場合・ 三次元的な矯正後の歯列の位置をある程度予測できる場合・ 歯列以外の部位に固定源を設置しなければならない場合・ 安定した強固な固定源が必要な場合・ 解剖学的制約により早期にインプラント埋入ができない場合・ 成長期が完了している場合表1 歯科の治療ステップ①主訴に対する応急処置②資料採取③治療計画の立案とインフォームドコンセント④基本治療(不良補綴物の除去/歯周組織の炎症のコントロール)⑤暫間補綴物による咬合の安定および保存修復処置⑥矯正治療/歯周外科処置/インプラント治療⑦暫間補綴物による歯周組織の安定と顎位の模索⑧最終プロビジョナルレストレーションの製作と装着⑨最終補綴物の製作と装着⑩メインテナンスまたはSPT表3 骨に固定源を求めた治療法の成功率固定源の方法成功率ミニプレート91.4~100%口蓋インプラント74.0~93.9%ミニスクリュー(TAD)61.0~100%補綴用インプラント100%TADインプラント固定源としての信頼性信頼性あり非常に高い信頼性治療順序TADを利用した矯正後にインプラント埋入インプラント埋入後に矯正治療インプラントの埋入位置矯正後の欠損部位に埋入矯正後の欠損歯の位置を想定して埋入垂直的な咬合支持能力非常に乏しい非常に高い信頼性咬合挙上能力間接的には可能非常に有効OJ Award受賞120

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です