歯周外科のハプニング&リカバリー
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麻酔切開術後対応デブライドメント(術中)剥離メインテナンス縫合 切開時の出血は、吸引や滅菌ガーゼによる止血を行うことで、ほとんどの場合は視野が確保できる。また、水平位での治療の場合、遠心から近心へ向けて切開を行うことで、血液が流れて術野が見えなくなるのを防ぐことができるので、切開方向を確認すること。深いポケット底部では炎症が残存していることも多く、出血量が多い場合には浸潤麻酔を追加してもよい。歯間部歯肉への浸潤麻酔は、出血のコントロールのためには有効であるが、多量に注射すると、血流障害から歯肉壊死を術後に引き起こす原因となりうるため、注意する。 口蓋部から遊離歯肉移植や結合組織移植片を採取する場合に部分層弁を形成すると、とくに出血が多くなる。大口蓋動静脈に注意し(図17)、浸潤麻酔を上手に行いながら切開をしていく。介助者による吸引の補助も非常に重要である。出血があまりにも多く、異常出血が疑われる場合は、圧迫止血し、手術を中止したほうがよい。高血圧や抗凝固薬を使用している患者は、コントロールされていても、通常より出血傾向が強いため十分に注意が必要である。 下顎前歯部のように歯の萌出が密な部分や、歯冠の豊隆が強い上顎大臼歯部などは、歯頸部に沿って切開を入れることが案外難しい部位である。メスの刃は小型のもの(#15cや#390、27頁参照)が使いやすい。また、メスホルダーもスタンダードな平型のものより丸柄ののほうが操作しやすいことがある(図18)。 切開の際は、まず下書きのイメージで浅い概形線を入れ(ライニング、図19a)、その後、概形線に沿って骨面に達する深い切開を入れる(ディープニング、図19b)ようにする。とくに幅が狭い部分はブレードをたて、ソーイングモーションで押し切りを行う(図20)。万が一のときは!起こりうるハプニング&リカバリーQ1ハプニング出血が多くて切開する部分がよく見えない!A1リカバリー切開方向を確認し、浸潤麻酔の追加を検討しよう。Q2ハプニング歯に沿ってうまく切開ができない!A2リカバリーライニングとディープ二ングを意識してみよう。狭い部分は刃部がコンパクトなメスを使おう。切歯窩鼻口蓋神経大口蓋神経小口蓋神経小口蓋動脈大口蓋動脈図17 上顎における大口蓋動脈の走行。大きな血管や神経の走行を解剖学的に把握していることは非常に重要である。図18a,b aの平型がスタンダードなメスホルダー。bの丸柄のものも操作しやすい。ab32

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