SAFE Trublesshooting Guide Volume2 患者由来性合併症編
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巻頭特別企画インプラント治療における医科的患者由来合併症2 先人による糖尿病患者への注意喚起 1961年、正木は日本歯科医師会雑誌上に「歯周病と糖尿病」と題する総説を発表した2)。「歯周病と糖尿病との関連性は古くから論じられている」という一行から始まるこの短報には、現代にも通じる知見が収められている。 正木は「糖尿病と慢性歯周病は別個の疾病であって糖尿病に歯周病が存在していると逆に影響され、また反対に歯周病は糖尿病の状態を悪化させることがある」と述べたうえで、糖尿病患者に歯科的処置を行う際の注意点として、CollinsとCraneの共著から次のように引用している。(以下、原文ママ)1 はじめに 糖尿病は加齢とともに発症率が高まる疾患であり、平成27年の国民健康・栄養調査によれば、70歳以上で糖尿病が強く疑われる者の割合は男性で27.3%、女性で17.2%にも達している1)。 歯科外来でインプラント埋入などの外科的処置を要する患者は高齢者が多数を占めると思われるが、その多くは糖尿病を有している可能性が高い。よって、日常診療におけるトラブルを回避するためには、糖尿病患者特有の病態とリスクを把握しておかねばならない。 本稿では糖尿病専門医の立場から、歯科がインプラント埋入時に留意すべきポイントを述べる。糖尿病患者の何が怖いのか?-インプラント埋入時に歯科が留意すべきポイント-西田 亙 Nishida Wataruにしだわたる糖尿病内科 院長医学博士、 糖尿病専門医広島県広島市出身1988年 愛媛大学医学部卒業1993年 同大学大学院医学系研究科修了 (医学博士)1994年 同大学医学部・第二内科 助手1997年 大阪大学大学院医学系研究科・神経生化学 助手2002年 愛媛大学医学部附属病院・臨床検査医学(糖尿病内科) 助手2008年 同大学大学院医学系研究科・分子遺伝制御内科学(糖尿病内科) 特任講師2012年 にしだわたる糖尿病内科 開院、現在に至る■歯科関連著作•西田 亙.糖尿病専門医からのメッセージ 社会まで見通せば、共感が生まれる。言葉がけが変わる。.歯科衛生士 2016;40(12):36-46.•西田 亙,原瀬忠広.こんなに歯科に身近な糖尿病.歯科衛生士 2015;39(11):57-72.•西田 亙,原瀬忠広,清水惠太,浜川裕之,大澤春彦.医科歯科社会連携による健口から健幸への道のり.日本歯科医師会雑誌 2015;68(1):35-42.•西田 亙.歯周病 (慢性歯周炎).糖尿病合併症事典 糖尿病診療マスター 2014;12(3):279.SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume2 患者由来性合併症編18

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