SAFE Trublesshooting Guide Volume2 患者由来性合併症編
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骨粗 症治療薬一覧降で著明に増加しており、骨折した患者の約36%は元どおりに歩くことができなくなり、特に女性の場合は骨折した患者の4人に1人が要介護となり、生命予後にも影響を及ぼすことが報告されている。 したがって、骨粗鬆症の薬物療法では、患者それぞれの病期と病態から、骨粗鬆症の重症度を理解したうえで合理的な治療薬を選択することが重要となる。現在では、骨吸収抑制薬に加えて骨形成促進薬が登場しており、治療薬の選択肢が広がっている。『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』では、これらの薬物について有効性のエビデンスを評価し、一覧表にまとめている(表1)。 インプラント治療の対象は中年期以降に多く、超高齢社会のわが国では今後さらに高齢患者に対する治療の機会も増加することが予想される。高齢者は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症、梗塞性疾患や骨粗鬆症などに罹患していることが多く、インプラント治療術者は医科と連携するとともに、これらの疾患に対する基本的な知識をもつ必要に迫られる。 今回、医療現場で一般的に処方されている骨粗鬆症治療薬を一覧表にまとめた。骨粗鬆症患者に対するインプラント治療の際の一助になれば幸いである。公益財団法人骨粗鬆症財団 理事長折茂 肇骨粗鬆症治療薬一覧表に寄せて 現在、わが国における骨粗鬆症患者は約1300万人と推定されており、人口の高齢化にともないその患者数は経年的に増加している。骨粗鬆症によって引き起こされる骨折は、日常生活の活動性(ADL)や生活の質(QOL)を著しく低下させるだけでなく、要介護の大きな原因となる。 骨粗鬆症は骨密度の低下と骨質の劣化により骨強度が低下し、骨折を引き起こしやすい全身性の疾患であるが、骨粗鬆症の患者集団は多様であり、骨密度の低下や骨質の劣化は一様ではない。骨密度の低下は、骨吸収亢進と骨形成低下によるものと考えられており、骨質の劣化は糖尿病などの生活習慣病の併存症の影響が原因のひとつとして報告されている。 生命予後・QOL維持の視点から骨折を予防すべき部位として、椎体と大腿骨近位部が重要である。椎体骨折と大腿骨近位部骨折は独立した骨粗鬆症の病態ではないが、椎体骨折の発生はその後の大腿骨近位部骨折の危険因子となることから、骨折の連鎖を防ぐためには、より早期に発生する椎体骨折を予防することが重要である。一方、2012年の全国疫学調査で大腿骨近位部骨折の発生件数は175,700件と推定されている。この大腿骨近位部骨折は70歳以骨粗鬆症治療薬一覧SAFE(Sharing All Failed Experiences) Troubleshooting Guide Volume2 患者由来性合併症編142

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