外来・訪問診療のためのデンタル・メディカルの接点
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121CHAPTER 13 [誤嚥性肺炎②] 高齢者の口腔ケアにおいては器質的口腔ケアと機能的口腔ケアがあり、その両面からサポートを行う。器質的口腔ケア 高齢者や要介護者は、意欲の減退、集中力の低下、上肢の機能低下などにより、口腔清掃が不十分であることが多い。さらに、口腔粘膜は上皮が菲薄化して損傷を受けやすく、歯だけでなく口腔内全体に汚れの付着が見られる。とくに、一部介助・全介助の方の場合は、歯や舌・口蓋など粘膜全体に舌苔や食渣、痰など多量の付着物が見られる。また、麻痺のある方は麻痺側の汚れが多い。したがって、口腔清掃時は天然歯や義歯へのケアはもちろん、粘膜へのケアも重要となる。そこで、器質的口腔ケアとして含嗽・機械的口腔清掃・化学的口腔清掃・義歯清掃などを行う。 まず当事者を口腔清掃のための安楽な姿勢に整え、含嗽を十分行う。付着物に合わせて歯・舌・口蓋など、適切な口腔清掃用具を用いて歯や粘膜全体を清掃していく。器質的口腔ケアのための口腔清掃用具 実際の現場では、口腔清掃方法や清掃用具に誤りが見られることが多々ある。生活環境やADL、自立度などに合わせた口腔清掃、歯ブラシの選択(表2)や改良・工夫(図1a〜d)が必要になる。「器質的口腔ケア」と「機能的口腔ケア」の両輪でリスクを減らす改良歯ブラシ:牛山DHグッズ|歯ブラシの毛の硬さ粘膜用ブラシ改良歯ブラシ(図1a〜d)H硬いM普通S柔らかいSSさらに柔らかいUS非常に柔らかい自立度自立―△◎△△○一部介助―△◎○○○全介助―△◎◎◎△表2 自立度に応じた歯ブラシの選択。必要性の順序:◎→○→△図1a 上肢や手指の可動域、握力等に応じた改良歯ブラシ。歯ブラシの柄を、太くして握りやすくする。歯ブラシの柄にビニールを巻き、その上に10cmに切ったホースを差し込む。その他、クッションのあるビニールを柄に巻いて太くする方法もある。図1b 力加減を調整するための改良歯ブラシ。「力加減」をわかりやすく伝えるため、歯ブラシの柄の先に鈴を垂らす。歯ブラシ指導時に「鈴が鳴らないように」「鈴の音を小さく」と指示すると、力加減がわかりやすく伝わる。必要に応じて付けたり外したりして用いる。糸はビニールの釣り糸を使用。図1図2図3

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