歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本
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1413579112468101213プラークとバイオフィルムは似たもの同士 プラークは細菌の塊と述べましたが、プラーク1mgあたりにはなんと10億個もの細菌が存在するといわれています。つまようじの先に目に見える程度のプラークを取ると、そこにはおそらく数百億個の細菌がくっついていることになります。 プラークの話をするときによく出てくる言葉に、「バイオフィルム」(図1-1)があります。バイオフィルムはぬるぬるした基質(菌体外多糖と粘液層)と水のあるところに形成さ研究によって、プラークは歯の汚れや垢というよりも、細菌がパックされたものであることがわかりました。つまり、プラークはむし歯や歯周病の原因となる細菌の塊なのです。 歯ぐきの腫れはプラークの毒素が原因と思われます。プラークとは、歯の表面に見られる付着物のことで、以前から「歯垢」「歯し苔たい」とも呼ばれていました。しかし、その後の 45歳の女性の患者さんです。「歯ぐきがたびたび腫れる」とのことで来院されました。 口腔内写真を見ると、確かに歯肉が腫れています。プラークが原因と思われますが、この患者さんにプラークについて説明し、ブラッシングの大切さを納得してもらうのが、今回の目標です。下記のポイントに沿って説明してみましょう。プラークは細菌の塊まずはプラークがどういうものなのかを、患者さんに説明しましょう。簡単に説明するなら……詳しく説明するなら…… バイオフィルム内の細菌同士の情報交換に使われている細菌性ホルモンを「クオルモン」といいます。バイオフィルム内の細菌は菌体外多糖で保護されているため、貪食細胞や抗体、抗菌薬などに対して抵抗性を示します。よって、機械的なプラークコントロールが重要となります。 歯科の領域では、デンタルプラークのほか、デンチャープラーク、舌苔、チェアユニットの給水管などにバイオフィルムが観察されます。プラークコントロールの大切さについてこう説明しましょうAさん (45歳・女性)プラークは細菌の塊P.11導入プラークを放っておくと歯周ポケットが深くなるP.12「歯肉縁上プラーク」と「歯肉縁下プラーク」は細菌が違うP.14ブラッシングは「歯肉縁下プラーク」にも効果がある歯肉の腫れを抑えるにはブラッシングが有効P.15P.16付録連動症例れます。身近な例としては、台所の排水口に見られる「ぬめり」があげられます。 バイオフィルムは口の中でも形成されます。プラークと似ていますが、ちょっと違うのは「バイオフィルムは細菌どうしが情報を伝達し合いながら生きている」という点です。プラークとバイオフィルムにはちょっとした定義の違いがありますが、「デンタルプラークは口腔内に形成されるバイオフィルム」ともいわれています。ですから広い意味では、プラークもバイオフィルムも同じものといえます。写真提供:丸森英史先生図1-1 バイオフィルムの構造細菌凝集体水のチャネル細い導管様のチャネル菌体外多糖(文献1より引用改変)10111413579112468101213プラークとバイオフィルムは似たもの同士 プラークは細菌の塊と述べましたが、プラーク1mgあたりにはなんと10億個もの細菌が存在するといわれています。つまようじの先に目に見える程度のプラークを取ると、そこにはおそらく数百億個の細菌がくっついていることになります。 プラークの話をするときによく出てくる言葉に、「バイオフィルム」(図1-1)があります。バイオフィルムはぬるぬるした基質(菌体外多糖と粘液層)と水のあるところに形成さ研究によって、プラークは歯の汚れや垢というよりも、細菌がパックされたものであることがわかりました。つまり、プラークはむし歯や歯周病の原因となる細菌の塊なのです。 歯ぐきの腫れはプラークの毒素が原因と思われます。プラークとは、歯の表面に見られる付着物のことで、以前から「歯垢」「歯し苔たい」とも呼ばれていました。しかし、その後の 45歳の女性の患者さんです。「歯ぐきがたびたび腫れる」とのことで来院されました。 口腔内写真を見ると、確かに歯肉が腫れています。プラークが原因と思われますが、この患者さんにプラークについて説明し、ブラッシングの大切さを納得してもらうのが、今回の目標です。下記のポイントに沿って説明してみましょう。プラークは細菌の塊まずはプラークがどういうものなのかを、患者さんに説明しましょう。簡単に説明するなら……詳しく説明するなら…… バイオフィルム内の細菌同士の情報交換に使われている細菌性ホルモンを「クオルモン」といいます。バイオフィルム内の細菌は菌体外多糖で保護されているため、貪食細胞や抗体、抗菌薬などに対して抵抗性を示します。よって、機械的なプラークコントロールが重要となります。 歯科の領域では、デンタルプラークのほか、デンチャープラーク、舌苔、チェアユニットの給水管などにバイオフィルムが観察されます。プラークコントロールの大切さについてこう説明しましょうAさん (45歳・女性)プラークは細菌の塊P.11導入プラークを放っておくと歯周ポケットが深くなるP.12「歯肉縁上プラーク」と「歯肉縁下プラーク」は細菌が違うP.14ブラッシングは「歯肉縁下プラーク」にも効果がある歯肉の腫れを抑えるにはブラッシングが有効P.15P.16付録連動症例れます。身近な例としては、台所の排水口に見られる「ぬめり」があげられます。 バイオフィルムは口の中でも形成されます。プラークと似ていますが、ちょっと違うのは「バイオフィルムは細菌どうしが情報を伝達し合いながら生きている」という点です。プラークとバイオフィルムにはちょっとした定義の違いがありますが、「デンタルプラークは口腔内に形成されるバイオフィルム」ともいわれています。ですから広い意味では、プラークもバイオフィルムも同じものといえます。写真提供:丸森英史先生図1-1 バイオフィルムの構造細菌凝集体水のチャネル細い導管様のチャネル菌体外多糖(文献1より引用改変)10111432まず、実際の症例写真などによって、各Chapterにおいて説明が必要な患者さんがどのような人かを提示します。1導入症例説明のポイント各Chapterのトピックを患者さんに説明するためのポイントを示しています。それぞれのポイントに沿って説明しましょう。2説明のポイントを、話し言葉で記した台本です。そのまま覚えて説明に使えます。それぞれのポイントについて、以下の2種類の台本をご用意しました。詳しく聞かなくてもいい患者さんに、ポイントを押さえた最低限の必要情報を説明する詳細な説明を求める患者さんに、たとえ話や具体例を交えて説明する患者さんの性格やチェアタイムに合わせて使い分けましょう。患者さん説明用台本 3覚えておこう説明のポイントに関連して、歯科医療従事者が知っておきたい専門的な情報をまとめました。患者さんに説明する必要はありませんが、頭に入れておくと役に立つ内容です。4本書の使い方簡単に説明するなら……詳しく説明するなら……2

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