歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本
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本書は、歯科衛生士をはじめとする歯科医療従事者が業務に際して患者さんに説明する事項を、「患者さんへの説明用台本」というかたちでまとめたものです。確かな知識に基づいてポイントを押さえた説明を行うために、ご活用ください。p5-11セメントエナメル境歯し槽そう骨こつ付ふ着ちゃく上じょう皮ひエナメル質歯し肉にく溝こう上じょう皮ひ歯肉口腔上皮歯し肉にく溝こう滲しん出しゅつ液えき結合組織p5-33骨吸収歯周ポケット上皮のダウングロース上皮のダウングロースp5-22プラーク亀裂上皮のダウングロース(始まり)プラークの付着健康な歯肉歯周ポケットが深くなる仕組み『歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本』とじ込み付録 ©クインテッセンス出版㈱『歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本』  1 プラークコントロールの大切さ 13ページとじ込み付録chap.﹇監修﹈ 下野正基1413579112468101213 プラークが歯頚部に付着すると、歯肉組織内の細い血管において血管拡張と充血が起こります。血管が拡張する仕組みは以下のとおりです。まずプラーク内の内毒素によって、組織内の「ヒスタミン」などの炎症性物質(ケミカルメディエーター*と呼ばれます)がはたらいて、血管が広げられます。そうすると緩んだ血管に血液が流れ込みます。この状態を充血といいます。炎症の部分には通常の10倍以上の血液が流れ込みます。歯肉が赤く見えるのは、この充血が起こっているからです。 プラークによって歯肉が赤く見えるのには、もうひとつ理由があります。それは歯肉内の歯肉血管叢です(前述の歯肉組織内の血管とは別のものです)。歯肉付着上皮のすぐ下には、複雑な網目構造の細い血管があります。プラークが原因で炎症が起こると、プラークと非常に近い場所にある歯肉血管叢に大量(10倍以上)の血液が流れ込みます。つまり、血管内が大量の赤血球によって満たされるため、歯肉が赤く見えるのです。 「初診時に真っ赤になっていた歯肉が、ブラッシングやスケーリングによって1週間後には健康なピンク色に変化した」という経験はありませんか。これは、ブラッシングやスケーリングによって炎症の原因であるプラークが除去され、すぐそばにあった歯肉血管叢の血液量が正常に戻ったため、と考えられます。歯肉の赤み(発赤)はこうして起こる歯肉の赤み(発赤)や腫れ(腫脹)はプラークのしわざですが、ここではもう少し深く、赤みと腫れがどのように生じるのかを見ていきます。患者さんに伝えるには少し専門的すぎますが、歯科医療従事者として頭の隅に入れておくようにしましょう。p9-2p9-1正常血管拡張・充血セメントエナメル境歯槽骨エナメル質プラーク歯肉溝上皮歯肉口腔上皮付着上皮歯肉血管叢血管拡張・充血炎症が起こると、組織に入る血液量は10倍に増える発展講座*ケミカルメディエーター:炎症反応において重要なはたらきをする物質で、化学伝達物質ともいう。血管を拡張させたり、血管の透過性を高めたりする。ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどが知られている。1756発展講座各Chapterのトピック全体に関する、患者さん向けではないものの歯科医療従事者として知っておくべき情報や最新情報をまとめました。5患者さん説明用カード巻末に、各Chapterを患者さんに説明する際に使える「説明用カード」をとじ込みました。イラストなどを用いたわかりやすい内容で患者さんの理解を助けます。切り離してご活用ください。63

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