早期治療
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診査・早期発見・治療計画342診断手順は、系統立った一連の手順をふまなければならない(図3-1)。矯正歯科治療における徹底的かつ正確な診断の第一段階は、的確で十分な診断用データベースの作成である。これは歯性骨格性の異常の評価と認識のために必要である。第二段階は、歯列や顎の現在の状況と今後早期治療中に生じ得る成長に影響する変化について考慮した、正確な所見に基づく治療計画の立案である。矯正学的な問題は疾病に起因するのではなく、口腔器官の発育過程の異常から生じる。病因特定に困難もあるが、不正咬合の原因を明らかにし排除することは重要である。また不正咬合の病因や遺伝・環境要因の相対的な関与については、過去1世紀にわたり議論されてきた(1章参照)。ここ数十年の研究によれば、胎内において遺伝的なメカニズムは頭蓋顔面構造体の形態発生に大きな影響を与える。一方咬合の発育は、特に出生直後に環境の影響を強く受けるようである1。矯正歯科治療の目的のために、臨床か臨床関連領域かにかかわらず、すべての診断用データベースは⑴質問票と医療面接 ⑵臨床診査 ⑶臨床関連領域の診査(診断記録)の3つの大きな情報源から収集される。質問票と医療面接医療面接は、患者と医療者側にとり重要な手順である。 主な目的は患者と親の要望と、患者の社会的な立場や行動の評価にある。質問票は多くの矯正歯科医院で使用され、歯科衛生士か矯正歯科医が実施する。質問票の書式は、矯正歯科治療への患者の要望や期待を把握し目標を決定するために、あらかじめ患者や親に記入してもらう。質問票は4つの項目に分類される。⑴患者の主訴 ⑵社会的・行動学的評価 ⑶身体成長の評価 ⑷医科・歯科の既往歴患者の主訴医療面接の第一段階は患者の主訴と治療への期待を見つけだすことである。特に顔貌の審美性に関心がある場合、矯正歯科医から患者や親に直接質問することがこうした情報を確かめるうえで最善の方法となる。ここでは下記のような問診に答えてもらう。図3-1 系統化された診断手順。口腔外診査模型診査口腔内診査・顔面の正貌・顔面の側貌・顔面の対称性・顔面のバランス・口唇・鼻・オトガイ・鼻唇角・オトガイ唇溝・姿勢・口腔衛生状態・う蝕・歯周組織・舌(大きさ、位置、機能)・顎骨の機能、偏位・歯齢および萌出パターン・非対称な萌出・歯の早期喪失、晩期残存・萌出障害(アンキローシス、 移転歯、異所萌出、埋伏歯)・歯のサイズ、形態、歯数 (欠損、過剰歯)・歯列正中線、顔面正中線主訴診断社会的・行動学的評価写真評価身体成長の評価エックス線写真診査医科・歯科の既往歴セファロ分析診断記録臨床診査質問票・医療面接

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